5月27日、NTTコミュニケーションズは都内のホテルで初の「Partner Conference」を開催。グローバル展開を強力に進めるデータセンターとクラウドを中心に据え、パートナービジネスの基盤となる方向性をアピールした。
1ヶ月に1つのペースでデータセンターを立てる
Global Cloud Visionを掲げ、クラウドサービスのグローバル展開を進めているNTTコミュニケーションズ。今回初となるPartner Conferenceでは、SIerやパッケージベンダーなどを集め、データセンター事業とクラウド事業について重点的に説明された。
登壇したNTTコミュニケーションズ 取締役 クラウドサービス部長の田中基夫氏は、オンプレミスシステムのクラウド化をきっかけにお客様のICT基盤をグローバルに最適化するというGlobal Cloud Visionの方向性について説明。「われわれはどちらかというとインフラ屋なので、お客様の業務に近いところは得意ではない。こういった部分はパートナー様と組んでお仕事していきたい」と語り、同社が進めるデータセンターの取り組みについて説明した。
同社は「Nexcenter」のブランドで、世界16カ国、130拠点でデータセンターを展開している。TeleGeographyという調査会社のレポートによると、事業者別のデータセンターの総面積でNTTグループはグローバルで見てなんとトップ。NTTグループのNTTコミュニケーションズの分だけ切り出しても、約42万㎡と5~6位になるという。
とはいえ、直近ではエクイニクスとDRTが買収攻勢を仕掛けており、グローバルでは2強になりつつあるのも事実だという。これに追いつくべく、NTTコミュニケーションズは積極的なM&Aを行ない、データセンターの提供能力を増強している。この数年、同社は米国のRagingWire、イギリスのGyron、インドのnetmagic、そして先日はドイツのe-shelterなどを買収。サーバールームの面積で35万㎡、10万ラック程度を確保している。その結果、2015年度には、サーバールームの面積は国内より、海外の方が大きくなる見込み。田中氏は「NTTという名前がついているため、国内マーケットで商売しているというイメージが強いかも知れないが、実はグローバルの方が大きくなっている」と語る。
単に面積だけを誇るのではなく、NTTコミュニケーションズのデータセンターは、高い信頼性や省エネを実現するため、さまざまな技術が取り入れられている。たとえば、東京第6データセンターでは4種類の免震装置を用いることで、地震リスクを大きく軽減。また、省エネに関しても温度制御を自動的に行なう「SMART DASH」やロータリーUPS、外気冷却などを導入している。その他、英Gyronの壁面吹き出し空調や米Raging Wireが特許を持つ2N+2の高信頼電力供給システムなど、グループ内の事業者の技術も新しいデータセンターに取り込まれていく予定となっている。
今年度は欧米で3つ、APACで3つ、日本で3つの合計9つのデータセンターの建設が予定されており、これに先日買収したe-shelterの3つを加えると、NTTコミュニケーションズだけで今年度中に12個データセンターが増えることになる。1ヶ月に1つ新しいデータセンターが増えると考えれば、まさに圧倒的なスピードと規模でデータセンターに投資し、グローバルプレイヤーとしての地位を築こうという同社の意気込みが伺える。
ユーザー自ら設定できるSDNをコアに据えたクラウド基盤
これら自社所有のデータセンターを基盤にNTTコミュニケーションズでは、「Enterprise Cloud」と「Cloud n」という2つのクラウドサービスを展開する。仮想マシン、ホスティング、ストレージ、データベース、ネットワークなど幅広いメニューを持っており、グローバルで共通した構成で提供しているのが特徴となっている。
特にEnterprise Cloudでは、Oracle DBの従量課金での利用やライセンス持ち込みなどに対応する点が大きい。「今までオラクル製品をクラウド上で使うのは難しかったが、われわれはオラクルと契約し、柔軟に使えるようになっている。パートナー様が抱えているお客様の中で、クラウドに移行したほうがよい場合は、ぜひ弊社のクラウドをご検討いただきたい」と田中氏は語る。
もちろん、これだけでは他社との差別化は難しい。そのため、同社が差別化要因として注力しているのが、SDN(Software-Defined Network)だ。3年間SDNを使い込み、柔軟なリソース設定とネットワーク制御が可能になったことで、内部的な管理の負荷を大きく削減できたという。田中氏は、「以前、『SDNがなくてもL2で全部コントロールできます』と言っていた部下が先日やってきて、『SDNがなければ、とてもじゃないがうちのネットワークはコントロールできませんでした』と話していた」と語る。
ネットワーク構成をセルフマネジメントできるSDNは、お客様にとってもメリットは大きい。同社のSDNは13箇所の国と地域で導入される予定で、単一のポータルで全世界の拠点を制御できるようになる。コロケーション接続オプションとして、クラウドとコロケーションをつなぐところで、使われているお客様が多いという。「今までは紙の申込書をお客様とやりとりさせ、本当にご苦労をかけていました。しかし、われわれはサービスにSDNを導入し、お客様やパートナー様がネットワークも含めて、クラウドをコントロールできる世界を構築しようとしています」と田中氏はアピールする。
現在、Enterprise CloudとCloud nあわせたユーザーは7300を突破しており、グローバルシステムの統合、ビッグデータ&IoTサービスなどさまざまな用途で用いられている。海外でも1700社を突破しているが、田中氏は「今後パートナー様といっしょにグローバルを開拓していきたい」と語る。
そして、今冬には統合SDNの上に専有型・共有型のクラウドを両方提供できる新しいクラウド基盤を構築。他社サービスとあわせて、単一のポータルで管理できるサービスを目指している。新クラウド基盤では、基幹システムをオーバーヘッドなく利用するためのベアメタル、コミュニケーション基盤等で最適なマルチハイパーバイザー環境、複数の多様なネットワークを柔軟に構成できるSDNなどでクラウドの利用領域を拡大。目指すのは、オンプレミス、クラウド、コロケーションなどをSDNでつなぎ、各システムを柔軟に配置。シームレスに利用できるICT環境だという。
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