富士通研究所は5月29日、スマート端末やウェアラブル端末で動作するWebアプリケーションの安全性と操作性を両立する仮想化技術の開発を発表した。
スマート端末やウェアラブル端末で患者情報や社外秘情報といった高い秘匿性が求められる場合、安全性の観点では端末にデータを残さないシンクライアント環境が理想となる。だが、一般にシンクライアント環境は画面情報の送受信が頻繁に発生するため、モバイルネットワークの状況や端末側の処理能力によっては、人が遅いと感じる数百ミリ秒から1秒程度の遅延が発生することがある。これは、スワイプ操作などスマート端末特有の操作に影響を及ぼすという。
今回発表された技術は、スマート端末向けに開発されたWebアプリケーションをユーザーインターフェース処理(UI処理)とデータ処理に自動で分離。データ処理はクラウド側(サーバ)で実行し、UI処理はスマート端末側で実行する仮想化技術となる。これにより、今後、新たにスマート端末やウェアラブル端末で動作するWebアプリケーションに対して、シンクライアント環境と同様の安全性とすぐれた操作性を両立した業務アプリケーション実行環境を実現できるとする。
この技術の特徴は、以下の通り。
Webアプリケーションの分散
端末とサーバには新たに開発したスマートフォンを仮想化するエンジンをそれぞれ搭載し、UI処理の移動や処理内容の実行などを担当。従来のWebアプリケーション・ライブラリを仮想化に対応させるため、独自開発した仮想化対応版のWebアプリケーション・ライブラリに置き換える。
Webアプリケーションの実行時に、ソースコードを解析。Webアプリケーションの実行に必要なライブラリ(Webアプリケーション・ライブラリ)で定義されたUIに関連するAPIが記述された部分を、ソースコードのUI処理と推定して分離する。その上で、端末からサーバにWebアプリケーションの実行が通知されると、ソースコードのUI処理部分と仮想化対応版のWebアプリケーション・ライブラリをスマート端末に転送する。
UI処理以外のソースコードはデータ処理として、サーバ側で実行。転送したUI処理は、スマート端末で分散して実行することで、安全性と高い操作性を確保する。これらは、Webアプリケーション実行時に動的に処理するため、分散処理に必要な再設計・再開発不要という。