撮像素子が小さいことによる画質的メリットもある!
J5の大きな魅力はピントの合う範囲、いわゆる「被写界深度」だと思う。最近はなんでもかんでも“背景ぼかし”といった風潮があり、被写体の前後をぼかしやすいことがステータス的な面もある。
確かに、背景や近景をぼかすことで被写体を強調させることや、余計な情報をなくすことでシンプルに見せたい部分だけを見せられるという点では、いい写真が撮りやすいとも言える。
撮像素子が大きければ被写界深度は浅くなる傾向がある。同じ画角が得られるように絞りを同じ数値にして撮った場合、撮像素子が大きいほうがピントは浅く、撮像素子が小さいほうがピントが深くなる。
逆に考えると、撮像素子が大きなデジカメの場合にはピントが合ってほしくても合ってくれない場合が多い。
単純に言うと、レンズが広角になればなるほど被写界深度は深く、望遠になるほど浅くなる。また被写体が近いほど被写界深度は浅く、遠いほど深くなる。
これに絞り値を組み合わせて任意に被写界深度を得られるように工夫するわけだが、フルサイズ素子はもちろん、APS-Cサイズあたりは意外にぼけやすくピントが浅いというよりはピントがずれているという事が多くなりがちだ。
また、マイクロフォーサーズでも多少はましだが同様の事がおきやすい。その点、1型サイズの素子の場合には思ったよりもしっかりとピントが合うことが多い。
背景はボケにくいが、ある程度はテクニックでカバーできる場合も多く、しっかりとピントが合いつつも、そこそこにボケ具合を楽しめるのが魅力だ。
撮像素子が小さい利点はAFの動作速度にもある。同じ画角で撮りたい場合、大きな撮像素子を採用するデジカメに比べてレンズの焦点距離が短くなる。
35mmフルサイズ判と同じ画角で撮ろうとした場合、35mm判で50mmに相当するのはAPS-Cサイズでは約35mm前後、マイクロフォーサーズでは約25mm前後、1型センサーでは約18mm前後になる。レンズの焦点距離が短いほうがピントを合わせるためのレンズ移動距離が少なく、動作速度が確実に速い。
ミラーレス機は総じてデジイチよりもAFの動作速度に難点を抱えているが、Nikon 1なら気にならないくらいの速さでAFが動作し、しっかりとピントが合う。
もちろん、撮像素子の大きさだけでなく、カメラ内部の処理速度の恩恵もあり、操作のレスポンスそのものが速いので気持よくカメラを操作することができる点も重要だ。
AFシステムそのものは従来モデルのJ4とスペック的には差はないが、J4でも十分高速に動作していたので不満は感じない。
機能がいっぱいで多くの人にすすめられる1台
個人的に気になったのはシャッターが完全に電子シャッターになったため、シャッター音を消しているとまったくの無音で撮った瞬間がわからない点。ただ、最近はスマホで撮る機会も多いため、慣れている人も多いだろうから特に問題にはならないだろう。
好みにもよるが、クラシカルな外観は見た目や持った時の雰囲気がいい。タッチパネルやチルト機構を備えたモニターは操作性が高く、機能面も充実しており気軽な撮影から本格的な撮影、特殊な撮影までカバーできる。
また、NFCとWi-Fiを内蔵しているのでスマートフォンと接続が行なえ、リモート撮影や画像の転送もできる。数多くあるミラーレス機の中ではコンパクトでAF動作も速く、機能も充実しているので、特に初級~中級ユーザーへのおすすめ度は高いと言えそうだ。
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