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SAPPHIRE NOW 2016で語られたHANAの革新

S/4 HANAはデジタルをコアにしたビジネスへの移行を促す

2016年05月31日 10時00分更新

文● 末岡洋子

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 独SAPは5月17日より3日間、米オーランドで年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2016」を開催した。ここ数年、SAPはインメモリ技術「HANA」を中心に製品ポートフォリオの革新と拡大を図っており、イベントでは次世代ERPの「S/4 HANA」、PaaSの「HANA Cloud Platform(HCP)」の最新の活用例や強化などが発表された。また、BI/アナリティクスでは「SAP BusinessObjects」ブランドをクラウドにも拡大した。

機械学習と予測分析でマーケティング、製造が変わる

 2日目の基調講演のステージに立ったプロダクト&イノベーション担当エグゼクティブボードメンバーのBernd Leukert(バーンド・ロイケ)氏は、「ライブビジネス」をテーマに、SAPの技術とそれが可能にすることを示して見せた。

プロダクト&イノベーション担当エグゼクティブボードメンバーのBernd Leukert(バーンド・ロイケ)氏

 最初に取り上げたのは、マーケティングだ。SAPはマーケティングとオムニチャネル/ECの「SAP Hybris」を持つが、顧客と製品のデータ管理を統一し、機械学習などの最新の技術を活用することで、ターゲッテイングしたマーケティング活動に加えて、文脈に基づいたコンテンツをライブで提供できるという。

 デモでは、自動車リース企業の例として、リース期限が迫っている顧客に対し、Facebookを含むさまざまな情報を集めて適切なオファーを提供する様子を実演してみせた。さらに、文脈、やりとり、Web上の行動などからリアルタイムで顧客プロファイルを作成する「Hybris Profile」を利用し、パーミッションベースで、機械学習と予測分析を利用してパーソナライズしたレコメンデーションを提示してみせた。

パーソナライズされたおすすめ商品をライブで提示するデモ。「SAP Hybris」は、SAPが2013年に買収したHybris製品を中核としたマーケティングライン

 次に紹介したのは製造だ。自分仕様の製品をすぐに手に入れたい、など顧客の要求は高まる一方だ。製造の現場では、これまではロットサイズの最適化が重要だったが、今後は「個々の顧客の需要をいかに速く満たすかという柔軟性が求められる」とLeukert氏。IoTとインダストリー4.0時代に向けた製造向けシステム「SAP Connected Manufacturing」は、ERP、製造、自動化を統合してカスタマイズ製品の製造を支援するという。これがもたらすものは大きいーー「現在、製造現場はマス製品を製造しているが、将来は製造プロセスの各コンポーネントが個々の注文に沿って製造される」とLeukert氏。

 これらを下支えするのがS/4 HANAだ。「伝統的なERPシステムでは限界があり、ボトルネックになっていた。そこでわれわれはS/4 HANAを開発した」とLeukert氏。たとえば顧客の1社で、14万3000人のERPユーザーを抱える最大レベルのS/4 HANA事例となっているNestleでは、毎秒45000件のSQLステートメントが走ると同時に、レスポンス時間は40%改善したという。「S/4 HANAはデジタル経済のデジタル屋台骨だ。ITインフラを心配する必要はない。あらゆるビジネスプロセスを実現できる」と顧客に伝えた。

PaaSのHPCーー拡張、統合、構築の3つのユースケース

 製造ではまた、グローバルの3DプリンターネットワークでUPSと提携したことも発表した。HANA Cloud Platform(HPC)を土台に、ロジスティックなどUPSの機能とSAPの製造とサプライチェーンを統合したクラウドを構築、部品が必要になると3Dプリンターにオーダーを送り、製造して出荷することが可能になる。地域によっては、翌日配達も可能という。「製造現場と顧客を結びつけるエンドツーエンドのソリューション」とLeukert氏、すでにモーションコントロールシステムのMOOGなどが実験的に利用しているという。2017年始めに提供を開始する。

 HPCは2013年に発表したPaaSで、Cloud Foundryをベースとすることでベンダーロックインのないオープン性を特徴とする。Leukert氏は「AWSでスタートし、HCPを使ってSAPのクラウドに移行することもできるし、SAPのクラウドでスタートして自社のクラウドやデータセンターに動かすこともできる」と述べた。

 HCPのユースケースとしては、1)拡張、2)統合、3)新しいアプリケーションの構築、の3つを紹介した。

 1)はマイクロサービスを使って、任意のビジネス機能をエクスポーズするもので、アプリケーションはこれを簡単にコンシュームしてデータにアクセスできる。この日、APIの管理、検索、コンシュームができるカタログサービス「SAP API Central」(旧名称は「SAP API Hub」)を発表した。

 2)の統合は、「HANA Cloud Integration(HCI) Services」により実現する。Leukert氏によると、HCIは今後のSAPの標準統合技術として、ポートフォリオ全体で利用するという。クラウドからオンプレミス、クラウドからクラウドのシナリオをサポートし、「今後HCI、関連する統合サービスは必須コンポーネントになる」とした。

 そして3)は差別化につながるアプリケーションの構築で、上記のUPSはこの例になる。

 HANAそのものの革新も続いており、SAPPHIRE直前に発表された最新のサービスパック(SP12)ではグラフデータの処理などの新機能が加わった。また、キャプチャ&レプレイとして、ライブのワークロードをキャプチャしてターゲットシステムでリプレイする機能を組み込んだ。これにより、ライブの運用環境に変更を加える前に新機能を評価できるという。メンテナンスライフサイクルプログラムも拡大し、最大3年間のメンテナンスを受けるか、年に2回最新のHANAプラットフォームを採用するかを選択できるという。

 Leukert氏はまた、2015年に発表したHadoopなど分散環境でのデータを保存、管理、処理を可能にする「SAP HANA Vora」をGA(一般公開)としたことも発表した。VoraはApache Sparkベースのクエリエンジンで、HANAとHadoopの統合を実現するものだ。

BI製品を「SAP BusinessObjects」ブランドに統合

 BI分野では、これまで「Cloud for Analytics」としていたクラウドサービスを「SAP BusinessObjects Cloud」に改名した。今後、オンプレミス版の「SAP BusinessObjects Enterprise」との2本柱で進め、BIやアナリティクスに関連したものはすべて「SAP BusinessObjects」ブランドに入ることになる。この一部として、モバイルアプリ「SAP BusinessObjects Roambi」を米国で提供開始した。

BIは「SAP BusinessObjects」ブランドに統一する。モバイル(Roambi)のほか、取締役が大画面にさまざまな指標を表示しながら自社のビジネス状況をすぐに把握できる「SAP Digital Boardroom」の土台になる。

 SAP BusinessObjects Cloudを導入しているのが、エネルギー飲料のRed Bullだ。同社はRed Bullカーなどで世界を回って試飲を配っているが、このサンプル管理でSAP BusinessObjects Cloudを利用している。SAP BusinessObjects Cloud上に「コンシューマーターゲッティング」というダッシュボードを作成、デモではKPIをみながらどの地域でサンプル配布をすべきか、改善の余地があるのかなどをセルフサービス形式で分析してみせた。

Red BullはSAP BusinessObjects Cloud上でサンプル管理とパフォーマンスを分析して、成果を上げているという

 Red Bullのビジネスアプリケーション担当トップのChristian Stoxreiter(クリスチャン・ストックスレイター)氏は、SAP BusinessObjects Cloudを選んだ第一の理由として「ユーサビリティ」を挙げた。「ユーザーインターフェイスが新しく、簡単に使える」とし、専門家でなくても使える点を大きく評価した。また、オンプレミス、クラウド、ローカルにあるデータから分析が可能で、「自社のビジネスについて360度のビューが得られ、高速でアジャイルな意思決定ができる」とも述べた。同社はこれまで複数の分析技術を使っていたが、BusinessObjects Cloudに一本化していくという。

 SAPの強みは包括的なポートフォリオだ。Leukert氏は最後に、「レポートサイクルを短縮化しつつ、コスト管理を強化したいCFOなら「S/4 HANA Finance」から、最高のタレントを獲得しつつ運用コストを抑えたいHR担当者なら「SAP SuccessFactors Employee Central」からスタートできる」と述べ、「SAPを信頼してほしい。われわれはデジタルトランスフォーメーション、ライブビジネスへの変革をサポートできる」と会場に語りかけた。

デジタルコアであるS/4 HANAを中核に、HCPによりさまざまな機能が結びつく

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