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新生SAPの幕開けを告げる「SAPPHIRE NOW 2015」第4回

社内の非構造データの相関関係を瞬時に見つけ出す

HANAのグラフエンジンで新世代検索エンジンを試作したMKI

2015年06月09日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集●大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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社内のあちこちにある非構造データを活用して、専門知識を持っている人を探したり、関連ドキュメントを簡単に検索できないか? そんなソリューションをSAPのインメモリプラットフォーム「HANA」のグラフエンジン機能を活用して試作したのが、三井情報(MKI)である。

新コーナーCCCで披露されたインテリジェント検索エンジン

 フロリダ州オーランドで5月初めに開催された「SAPPHIRE NOW 2015」のフロアの隅に、今年は「Customer Connect Center(CCC)」という新コーナーが登場した。HANAを軸にERPベンダーからデータベースも抱擁する総合ベンダーに転身を図るSAPにとって、HANAのユースケースを増やすことは成功の要となる。そこで、顧客やパートナー同士が自分たちのソリューションを紹介したり、学び合う場所をと設けられたのがCCCだ。このCCCにおいて「インテリジェントな検索エンジン(Intelligence Search Engine)」と呼ばれるソリューションを披露したのが、三井物産の情報システム子会社であるMKIだ。

Customer Connect Center(CCC)でプレゼンを披露するMKI

 MKIは、ERPをはじめSAP技術を利用したシステムインテグレーションを多く手がけている。巨大な親会社に支えられてはいるが、そこに安住することなく最先端の技術を活用したソリューション開発を進めている。SAPのHANAはその1つで、HANAが発表されてすぐにSAP本社のあるドイツに行き検証を行ったという。得意とするバイオ分野でのゲノム解析に活用したのを皮切りに、HANAのスピードを市況予測などに応用するソリューションをこれまで開発してきた。

 今回披露されたインテリジェント検索エンジンの肝となるのは、HANAに導入されたグラフエンジン機能だ。まだ正式機能ではなく、MKIは2014年よりSAPのアーリーアダプタープログラムの一環として顧客とともに検証してきた。国際イベントでは受け身になりがちだが、「情報を受け取るだけでなく、積極的に発信してかなければ」と同社の担当者。MKIの重要課題である国際展開も、SAPPHIREでの積極的な活動の背景にあるようだ。

キーワードの検索で相関関係が太線で表示

 ソリューションの概要としては、メール、スケジュール、ドキュメントとさまざまなドメインに散在する構造・非構造データからキーワードを基に関連する人や情報の相関関係を調べて表示するというものだ。これにより、その情報を握る人、重要なコンタクトを持つ人、あるいは文書を容易に調べられるという。同社のR&D部ITイノベーション室 室長の岡部伊隆氏は「地理的に分散し多業種を扱うような社内で、新たにプロジェクトを立ち上げるといった際に、すぐに人や文書を探すことができる」と語る。

MKIの神戸信光氏(左)と岡部伊隆氏(右)

 具体的には、マイクロソフトの「SharePoint」「Outolook」「Active Directory」「Windows Server」社内SNS「Yammer」などと接続し、さまざまなフォーマットのデータをクローラーを利用して収集する。HANAにデータを取り込み、ストアドプロシージャや全文検索などの機能を使って情報をスコアリングし、テキスト検索によりデータを品詞単位で分析して意味を探る。最終的にグラフエンジン機能を利用して、複雑な相関関係を示すグラフを作るというものだ。

MKIがプロトタイプとして披露したインテリジェントな検索エンジンのアーキテクチャ図

 デモでは、画面に検索ボックスに「モバイルアプリケーション」などとキーワードを入力すると、「関連した人」「関連したドキュメント」「関連した投稿」などがリスト表示される。視覚化画面に切り替え、キーワードを空白スペースにドロップしていくとマインドマップやイメージツリーのように関連する人や情報などが表示される。相関関係が深いものは太線で表示されるため、すぐにキーパーソンがわかる。複数のキーワードを選択すると、それぞれに関係している人の相関関係が一目で把握できる。期間を限定して探したり、表示数を制限することも可能だ。

「mobile application」と「SAP」の2つのキーワードを入れ、グラフエンジンを利用して関係が深い人やドキュメントを表示詳細をドリルダウンできる

 このシステムの背後で大量のデータ処理を瞬時に実現してくれるのがHANAだ。動的にキーワードを変更したり、追加するなどして、角度を変えて相関関係を探ることもできる。顧客と行ったPoCでは10GB程度のデータに対し、2秒程度で結果を表示した。「HANAでなければ、10桁程度の違いがあるのでは」と岡部氏は述べる。

プロジェクトに必要なリソースを瞬時に集めることができる

 岡部氏によると、このインテリジェント検索エンジンは同社の顧客のニーズを受けて開発したとのこと。世界数十各国に拠点を持ち、従業員は5万人近く。400以上の関連会社や子会社を持つこの顧客は、新しいプロジェクトを立ち上げる際に効率よくスピーディに適任者を探したり、情報を探すことが課題となっていた。

 「これまではバーチャル会議室機能を使って人を募っていたが、これには限界があった」とMKI理事兼CTO補佐の神戸信光氏は語る。結局はいつも同じ人が利用しており全体に広がらない、ドキュメントが探せない、ディスカッションにより増えてくる複数のキーワードに対応できないという3つの問題があったが、これらを解決するという。「プロジェクトに必要な人、関連する組織、製品、ドキュメントなどを瞬時に集めることができるようになった」と神戸氏。岡部氏も、「非構造データの形ですでにある膨大な情報をそのまま活用できるという点は大きい」と満足顔だ。

顧客やパートナー同士が自分たちのソリューションを紹介したり、学び合うCCCの様子

 このように、顧客のニーズに合わせて開発したソリューションではあるが、非営利団体の支援、人事データベース、銀行とさまざまな応用が考えられるという。製品化については、SAPがこのグラフエンジン機能を正式版としたら提供を開始できるという段階まで完成しており、見通しとしては2015年内から2016年はじめを見込んでいるとのことだ。

 CCCでこのソリューションを国外企業を相手に紹介したところ、「クローリング機能は何を利用したの?」「動画や画像はクロールできるの?」「セキュリティは?」などといった質問がポンポンと飛んできた。そして「おもしろいね」とのコメントをもらった。言葉の壁はあっても、HANAの活用法、クラウドをどう利用するかなど技術者同士で会話が弾み、有意義なミーティングとなったようだ。

 実際、同ソリューションはHANAを利用した革新的なソリューションを競う「SAP HANA INNOVATION AWARD 2015」にノミネートされ、Business Applicatoin分野の「Technology Trailblazer」部門で3位に選ばれた。

 MKIは現在、約460億円の年間売上高を500億円台に拡大を図るべく、成長戦略の一環としてニューヨーク、シンガポールなどに拠点を設けて海外展開を進めつつある。受け身のSIから攻めのSIへ--積極的にプレゼンを行なう神戸氏、岡部氏らからはその意気込みを感じることができた。

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