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「勝つためのITとは?」第3回ITACHIBA会議レポート 第2回

マーケティングとモバイルアプリ、メニュー作りまでITで刷新

Web事業者にいた神谷氏がすかいらーくで実践したチャレンジ

2015年04月15日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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顧客ニーズドリブンのメニュー開発を進める

 さて、絶えまぬ改善努力によって、新しいITマーケティング施策を実行してきた神谷氏。次の施策は、機械学習やクラスタリングを活用することで、より深い顧客の研究を進めていくことだ。

 たとえば、レシート1つでもさまざまな顧客行動が読み取れる。日替わりランチを頼んだ滞在時間の短いお客様がいたら、ランチを召し上がりに来られたサラリーマンの方と推測できる。平日の昼に3名でランチとドリンクバーを頼んだ女性がいたら、ランチとおしゃべりを楽しみに来られた主婦のグループではないかと考えられる。こうしたデータを機械学習やクラスタリングで分析させると、明確にどんなお客様が、どれくらいいらっしゃるのか、昨年に比べて増えているのか、環境の変化で増減したかなどを割り出せる」と神谷氏は語る。実際、バーミヤンではチャーハンだけを食べに来る大学生の集団があり、これは値上げの相次ぐ牛丼屋と競合しているのではないかという仮説が立てられるという。

レシート1枚からさまざまな顧客行動が読み取れる

 さらに最近ではメニューの1つ1つに食材や調理方法、量やカロリーなどの属性を振っているという。こうした属性の組み合わせ、顧客行動とマッチングさせるよう、メニュー自体を変えていくというのが、次の取り組みの骨子になるという。「メニュー一筋で作っている社員でも、見ているお客様像が定量的なデータと若干ずれていることがある。こうしたずれを修正し、クリアにデータを見える化して、メニューを作るよう舵を切っているところ」とのことで、抜本的にメニュー開発を変えるブランドも出てきそうだという。

すかいらーくが実践するデータドリブンなメニュー作り

ITやデータを活用しなければ5年後は生き残れない

 プロモーションに関しては、マスからワンツーワンへのシフトを進め、一人一人に最適なメニューを、最適なタイミングで提案できるようにする。「たとえば、ダイエット中だから肉はダメかな?というお客様にヘルシーな料理を提案するとか、ランチが早すぎた人に早めにオファーを出すとか」といった施策を進める。そのため、お客様の来店頻度を見て、適切なタイミングでメッセージを出すとか、履歴を元に最適なメニューを提案すると言ったイメージだ。「DMってだいたい邪魔ですよね。でも、お腹のすいたタイミングで来れば価値のある情報として検討していただける」(神谷氏)とのことで、今まで人手に頼っていてはスケールしなかった案件もITを活用することで実現できる可能性があるという。

顧客のTPOにあわせたリコメンドを実現

 前職と畑違いの外食産業でなぜこうしたユニークなチャレンジを進めるのか? 神谷氏は東京大学の赤門の前でロボットがセンター試験を受けようとして止められているイラストを披露し、「今のコンピューターは全国の私立大学の6割以上で合格できるレベルに達しており、2021年度には東大に合格できると言われている」と説明する。

東京大学の赤門の前でロボットがセンター試験を受けようとして止められているイラスト(出典:国立情報学研究所)

 IR情報をコンピューターが書き、労働人口がピーク時に比べて1000万人減少するという時代に突入する中、ITやデータを活用しなければ企業は生き残っていけないという危機感が根底にある。神谷氏は「これをやるか、やらないかによって、5年後の企業の業績は大きく左右される」と語り、講演を締めた。

 外食産業での実践を語った神谷氏の後、東急ハンズの長谷川秀樹氏のセッションに移る。

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