「勝つためのITとは?」第3回ITACHIBA会議レポート 第3回
迷える情シスに番長からのありがたいお話し
激論やめて早うやらんかい!東急ハンズ長谷川氏、アジる
2015年04月16日 07時00分更新
勝つためのITを探るITACHIBA会議3回目の前半を締めたのは、東急ハンズの長谷川秀樹氏。情シス部長やクラウドインテグレーターの社長など、今や四足のわらじを履く長谷川氏のセッションは、迷える情シスに届く熱いアジテーションだった。
ポテンヒットを拾って、組み入れる
前半のトリとなる東急ハンズの長谷川秀樹氏のセッションは、同社のO2O戦略の基盤となるハンズアプリの紹介ビデオからスタート。購入しないまでも気になる商品のバーコードをアプリから読み取っておける機能を紹介する。
女子がモバイルアプリを使うビデオを見ながら、長谷川氏は「この商品ええなあ。でも、これから合コンだから、こんなでっかい望遠鏡、持っていけへんやんけ!という時でも、店で商品をスキャンしておける。家帰った女の子が合コンの男の子よかったなあ、でも望遠鏡もよかったなあとなったら、あとから自宅にお届けできる」とハンズアプリについてアピールする。
こうした施策もスーパーと違って、その日のうちに必要という商品を売っているわけではない東急ハンズだからこそ実現できる新しい買い物体験。「ええなあでスキャン、ええなあでスキャン。5000円超えたら、おっ、配送料タダやんけと家に送ってもらえる」(長谷川氏)ということで、業態によっては有効だという。
東急ハンズの情シスの部長、EC・オムニチャネル戦略の責任者、クラウドインテグレーターであるハンズラボの社長、さらには東急不動産マーケティング&IT戦略部長まで務め、今や四足のわらじを履く長谷川氏だが、今回は事業会社の情シス部長という立ち位置で講演。そんな情シス部長の長谷川氏がこれまでやってきたのは「情シス部門とそれ以外の部門の垣根をなくしていった」ことに尽きる。
しかも部門同士の協調といった生ぬるいやり方ではない。「通電するものはシステムのようなもんや」(長谷川氏)ということで、通販、商品、物流、営業などさまざまな組織を傘下に組み入れ、業務とITを一体化してきた。「ポテンヒットを拾って、組み入れる」(長谷川氏)という強力な巻き取り力が大きな特徴と言えよう。
情シスはPLを考え、売上貢献を考えよ
情シスとしてやってきたもう1つは、売上に寄与する部署になること。一般的な情シスはPL上の販売費の予算がずーっとゼロで、管理費がひたすら積まれる構造になる。しかし、長谷川氏は「販売費がゼロだとどうしても守りに入る。だから、販売をプラスにする。稼ぐことを考えた方がええ」とアピールする。
手始めにやってきたのは、赤字だったEコマースの立て直し。「店舗の商品17万点のうち、ネットには1万点しかなかった。専用倉庫も金かかってた」(長谷川氏)とのことで、商品点数を10万点に増やし、商品の配送も新宿店から行なうようにした。つまり、店舗をEコマース用の倉庫にしてしまったわけだ。「やるんやったら思い切りやった方がええ」とのことで、チャネルの拡大や業務効率化などをあわせた大改革は、初年度に売上減という憂き目を見るが、次年度から黒字街道を駆け上がることになる。
この流れを受け、Eコマース事業の立て直しの次に取り組んだのが、クラウドインテグレーターであるハンズラボの立ち上げだ。「IT部門も確実にコスト削減してきたけど、絶対に限界にぶち当たる。だったら、単純に外の仕事しよう思った」とのことで、まずは東急ハンズの中でシステム開発を請け負うことを考える。しかし、同業の小売り会社2社回った段階で、「⻑⾕川君、提案も⾦額もけっこういいんやけど、普通はシステム専業会社に発注するのであって、小売業の東急ハンズに基幹システム発注するというのはちょっとないよねと⾔われた」(長谷川氏)という。この結果、東急ハンズから独立した会社としてできたのがハンズラボだ。
ハンズラボは東急ハンズからIT構築・運用を請け負うとともに、外販で利益を得るという構造になっている。マーケティングの初期投資も必要ないと退路を断ったが、最悪でもブレイクイーブンになるということで、立ち上げた会社。しかし、今ではしっかり利益をきちんと上げるようになっている。もちろん、東急ハンズ向けの開発に関しても、POSの自作やレシートの電子化など新しいチャレンジを進めているという。
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