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「勝つためのITとは?」第3回ITACHIBA会議レポート 第1回

第3回ITACHIBA会議でNRI鈴木良介氏が語った勝つためのITの実践

おしぼり、データレストラン、お見合おばさんで学ぶ勝つためのIT

2015年04月14日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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1月21日、IT業界内交流会「ITACHIBA(イタチバ)」の第3回目の会議が行なわれた。「勝つためのIT」を創出すべく、NRIの鈴木良介氏、すかいらーくの神谷勇樹氏、東急ハンズの長谷川秀樹氏を迎えたイベントの模様を実行委員会のメンバーの立場から振り返る。

1月21日、IT業界内交流会「ITACHIBA(イタチバ)」の第3回目のトップバッターはNRIの鈴木良介氏

勝つためのITを見出すために3人の賢者を招聘

 2014年からスタートしたITACHIBA会議。昨年は、ITソリューション塾を主催しているネットコマースの斎藤昌義氏、中小企業のIT活用を調査するノークリサーチの伊嶋 謙二氏がホストとして、2回のイベントを主催している。TECH.ASCII.jpのオオタニも実行委員会として参加しているが、いよいよホストとしてイベントをコーディネートする順番がやってきた。そんな経緯で、1月21日の第3回目が行なわれた。

第3回会議のホスト役を務めるASCII.jpの大谷イビサ

 斎藤氏主催の1回目はクラウド時代のSI戦略、伊嶋氏主催の2回目は中小企業のIT活用に焦点を当てたが、3回目のテーマとしては「コスト削減のITはもう古い! 勝つためのITをみんなで考える」を掲げた。理由はシンプル。記者としてエンタープライズIT・クラウド業界を見ていて、勝つためのITの議論が必要だとまだまだ足りないと感じていたからだ。

 では、勝つとはなにか? タイトルを付けるにあたって、実は実行委員の中でももめた部分でもある。一義的には「競合に勝つ」という意味が大きいが、少子高齢化が顕著な「市場の逆風に勝つ」というのも1つの見方。「グローバルでの競争に打ち勝つ」ために生産性を向上するというのもありだろう。つまり、定義は業種・業態によって異なる。勝つためのITとは、参加者各人によって答えが異なるのだ。

 そして、それぞれ違った勝つためのITを探し出すべく、今回は“ヘッドライナー級”の講演者を揃え、ヒントをもらうことにした。NRIの鈴木良介氏、すかいらーくの神谷勇樹氏、東急ハンズの長谷川秀樹氏の3人だ。

これからのITの主戦場がデータ活用になる背景

 NRI鈴木氏との公開インタビューは、同氏がなぜデータ活用に注目したのか?という問いかけからスタートする。

野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 主任コンサルタント 鈴木良介氏

 大手SIerの通信事業者向けのコンサルタントという立場の鈴木氏は、クラウドの進出が市場にどんな影響を与えるか、2007年くらいから見てきた。その結果、国内のICT市場がどんどんシュリンクしてくるという「クラウド怖い」仮説を立てたという。クラウドの台頭によって「サーバー持っていけば3000万円という世界」「オンプレのCRMを1000万円で受注」といった時代は終焉を迎える。「ミソは縮小移行。クラウドは、基本オンプレとコトが安価にできるというメリットになる。しかも、グローバルベンダーに顧客が流れるので、基本は国内のIT市場はシュリンクすることになる」(鈴木氏)。

 長らくハードウェアの販売から上のレイヤーに追い上げられてきた日本のITベンダーが、クラウドの台頭でハードウェア販売、さらにはアプリケーション開発からも駆逐される。この結果、より上位のデータ活用に至るというのが鈴木氏の論だ。

 しかも、コストセンターとなっている情シスは既存のICT市場を縮小代替する形で仮想化に進むため、利益に貢献するデータ活用に進むのは、いわゆる事業部門になる。「情シスはオサイフを小さくすることが使命になり、事業部門は売上が上がるためにコストかけてデータ活用やるのが使命になる」(鈴木氏)。つまり、プレイヤー自体が変わるというゲームチェンジだ。今となっては現実味を持った仮説だが、これを8年前に立てているという点で、その慧眼は恐ろしい。

 とはいえ、データ活用は電子化・自動化に続く第3の壁になっていると鈴木氏は指摘する。1980年代から本格化した業務の電子化・自動化の壁は多くの会社が超えることができたが、電子化の結果、溜まったデータはほとんど活用できていない。「手書きの伝票に課長が印鑑という壁は超えたが、溜まった営業日報データを営業マンのふるまい最適化にまで使っているところはまだまだ少ない」(鈴木氏)というのが実態だ。「第2の壁を超えた人がなにをしたらよいのか困っているのが現状。壁の先では、データ活用がまさに主戦場でもある」(鈴木氏)。

「第2の壁を超えた先にあるデータ活用はまさに主戦場でもある」(鈴木氏)

(次ページ、データ流通のギャップを埋める“お見合おばさん”が必要な理由)


 

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