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「勝つためのITとは?」第3回ITACHIBA会議レポート 第1回

第3回ITACHIBA会議でNRI鈴木良介氏が語った勝つためのITの実践

おしぼり、データレストラン、お見合おばさんで学ぶ勝つためのIT

2015年04月14日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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米国ではすでに「CMO vs CIO」?次は主導権争いに注目!

 さて、次に焦点になるのが、こうしたデータ活用、ひいては勝つためのITは誰が行なうのかという主人公議論だ。

 ITの高度化やネット化の恩恵により、店舗への送客施策にとどまっていた施策が、商品の購買という販促まで拡大できるようになっている。これを実現すべくセンサーの設置やネットワーク化など“店舗のIT武装化”を推し進めようとすると、現場に強いマーケティング・販促部隊とテクノロジーに明るいIT部門の綱引きが始まる。この結果、テクノロジーに強いCIOがマーケティング・販促の施策まで巻き取ってしまうと、予算は一気にIT部門にとられてしまうことになる。「花形だったマーケティング本部・広告宣伝部の島耕作が、情報技術本部の販売促進高度化部の広告宣伝係の一係長に成り下がってしまう状況すら発生しえるだろう」と鈴木氏は冗談めかして説明する。世間的には、マーケティング・販促部門がIT部門の予算を獲得してしまうという逆の統計もあり、IT部門と事業部門との綱引きは今後、よりホットな状況になると鈴木氏は指摘する。

「IT部門と事業部門との綱引きは今後、よりホットな状況になる」(鈴木氏)

 実際、米国はすでにCIOとCMOの綱引きが顕在化しつつある。鈴木氏によると、2014年3月に米国で行なわれたテクノロジー&マーケティングのシンポジウムでは、「CIO&CMO War」というセッションが盛り上がったという。このセッションでは、CMOをTV広告が大好きなアナログ派CMOとIT大好きのデジタル派CMOに分類。さらにCIOもCEOになりたい野心派CIOと技術フォーカスのオタク型CIOに分類し、それぞれの相性が語られたという。ちなみに「CMOに関しては、みんなCEOになりたいに決まっているじゃないかということで、一蹴された」(鈴木氏)とのことで、CMOは野心があるという前提になっているという。

 これらのCIOとCMOでITのプロモーションをやる際のベストな組み合わせは、やはりデジタル派CMOとオタク型CIO。「デジタルに精通したCMOと、自らの技術を試してみたい野心のないCIOがいると、やりたいこととやる方法がうまく組み合わさって、ベストマッチ」(鈴木氏)。また、アナログ派CEOとオタク型CIOの組み合わせも、お互いがまったく異なる方向を見ているので、もめないという。

 一方で、デジタル派CMOと野心型CIOが組み合わさるとCold Warになる。両者ともデジタルやITに精通しているので、ITプロモーションに関してもゴールにそれほど差がない。「双方、相手がやっていることを直接叩くことはできないけど、主導権争いはしなければならないという点でCold Warになる」(鈴木氏)。最悪なのは、アナログ派CMOと野心型で、お互いのやり方をめぐって大げんかになるという。鈴木氏は、「こういうのが薄々見えているので、大手電機と広告代理店は提携する。社内的にもこうした力関係は吟味する必要がある」と語り、講演を締めくくった。

 IT業界がデータ活用に向かう必然性、2年前の講演内容を陳腐化する業界のスピード、そしてITを活用するプレイヤーの変化などを、キャッチーなたとえ話で説明してくれた鈴木氏。勝つためのITを実現したい聴衆に、大きな刺激を与えてくれた。

 続いては、外食産業において勝つためのITを実践しているすかいらーく神谷勇樹氏の講演に移る。

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