三洋電機の技術者のノウハウが生きる
そして、この拠点を構成するのは、旧三洋電機で冷蔵庫などの開発に従事していた技術者たちであるという点も見逃せない。
もともと三洋電機の洗濯機、冷蔵庫事業の譲渡によって、日本での家電事業を本格化させているハイアールアジアは、「99%が日本人の技術者で構成されている」(伊藤社長)というように、三洋電機の白物家電事業が母胎だ。なかでも、冷蔵庫の開発拠点は、群馬県邑楽郡大泉町の旧三洋電機 東京製作所(現在は、パナソニック・アプライアンス社の事業拠点)に置かれていた経緯があり、東京からの道のりは、上越新幹線で熊谷駅で降りて、車で30分ほど移動するのが最短だった。
そうした立地から考えると、これまで三洋電機 東京製作所に勤務していた人たちが生活圏を変えることなく通勤ができ、さらに東京からもアクセスしやすい場所に移転したのが、今回の新研究開発拠点の立地でもあるのだ。
「東京にもっと近い立地としたことで、冷蔵庫だけでなく、エアコンや洗濯機の一部の研究開発も行えるようにしたい。まず200人体制でスタートするが、年内には300人を突破することになるだろう」と伊藤社長。そして、「オープンイノベーションの拠点としても活用したい」と伊藤社長は語る。
ハイアールアジアは、今年1月に、戦略発表を行ったが、その後、約20社から協業についての提案があったという。「そうした企業とのコラボレーションの場としても、ここを活用してもらってもいい。実際、この拠点内には、企業に部屋を貸すことができるように、部屋もたくさん作っている。また、異なる業界の企業とを結んだ『国際結婚』の場になることを考えている。化学反応を起こす場にしたい」(伊藤社長)とする。
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