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業界人の《ことば》から 第134回

言語の壁なく楽しめる駅、JR九州とパナソニックが実験

2015年03月10日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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九州を訪れる観光客は増大の一途、駅員は面食らう

 ここ数年、九州を訪れる観光客は増大の一途を辿っている。

 国土交通省九州運輸局の竹田浩三局長は、「昨年、九州を訪れた外国人観光客は167万人と過去最高を記録。対前年比で33%を超える伸び率になっている」とし、「九州は、豊かな自然に恵まれ、多種多様な伝統文化に恵まれている。外国人旅行者にとっても魅力が満載だ」と訴える。

 JR九州の青柳社長も、「JR九州が発売しているJR九州レールパスは、日本に来てから買えること、さらに円安による割安感もあり、外国人観光客に好評である。一昨年は8万枚、昨年は10万枚を販売したが、今年は16~17万枚売れるだろう」

 先に触れた「ゆふいんの森」も、平日は外国人観光客で8割が埋まるという。

 「韓国、台湾、香港、タイのほか、シンガポールやマレーシアといった国から、九州を訪れる外国人観光客が増加している。これまでは外国人観光客が訪れることがないような駅にも訪れるといったケースがみられている。いきなり外国人観光客が訪れて、駅員たちが面食らっている場面もある」(JR九州・青柳社長)と語る。

デジタルの力で、言語の壁を越える

 今回、パナソニックが展示した技術は、同社が開発中の多言語翻訳技術および光ID通信技術を活用したソリューション。いずれも、言葉の壁をなくし、コミュニケーションを円滑にするためのソリューションだ。

ペンダント型の自動翻訳機。首からぶら下げるだけで音声を聞き取り、それを翻訳

 たとえば、多言語翻訳技術を利用したペンダント型の自動翻訳機は、首からぶら下げたペンダント型のデバイスに向かって英語で話せば、日本語に翻訳した音声が発せられる。逆に日本語で話せば英語に翻訳して、音声を発する。

 日本人と米国人が、それぞれにこのペンダント型デバイスを首から下げれば、双方コミュニケーションが可能になる。現在、中国語、韓国語にも対応しており、近い将来には、べトナム語、ミャンマー語、インドネシア語などを含め、10カ国語に対応する。

メガホンヤクは日本語で話せばそれを録音して3カ国語に翻訳する。

 また、メガホン型のメガホンヤク(仮称)と呼ばれる自動翻訳機は、日本語で話すと、それを録音。それをもとに、英語、中国語、韓国語に翻訳。スイッチを切り替えるだけで、それぞれの言葉でメガホンから大音量で音声を発する。駅構内などで多くの人に呼びかけたい場合には最適な自動翻訳機だ。

テーブル型の自動翻訳機。

 そして、テーブル型の自動翻訳機では、お互いがマイクに向かって話せば自動的に翻訳。加えて、テーブル上のディスプレイに翻訳した文字を表示するとともに、関連する地図情報や観光情報、グルメ情報などを表示し、より効果的にコミュニケーションできるようにする。

 JR九州の青柳社長は、「パナソニックの多言語翻訳ソリューションのように、直接、声でスムーズなコミュニケーションができれば、駅員も助かる。こうしたツールが早く登場することに期待している」と語る。

ディスプレイには関連情報を表示する。

 さらに、光ID通信技術では、デジタルサイネージやスポットライトに、スマートフォンをかざすと、それに関連する情報を表示。わずか0.3秒で各国の言葉で表示することができる。これは、パナソニックが持つ50以上の特許をベースにして実現したものだ。

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