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地方からIT活用を考える「青森ITビジネス・マッチング交流会」レポート

青森のITが熱い!2年間走り続けた「新時代ITビジネス研究会」

2015年02月16日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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鍵はマーケティングと代理店開拓

 とはいえ、ITベンチャーは「お金がない、人がいない、時間もない」とのことで、リソースがないというのが悩み。こうした江尻氏は、お金をかけない商品作りをどうするか? ということで、いろいろな割り切りを行なった。「クラウドを活用する。自前で開発部隊を持たずレベニューシェアを進めていく」という方針を決めたという。

 この話を実現すべく、シンカはレベニューシェアのプロジェクトに興味を示したシステム会社に開発を委託。関西の会社だが、打ち合わせもSkypeで実施。「実際に顔を合わせたのは、半年で2回くらいしかない。ほとんどはSkypeで打ち合わせをやっている。打ち上げもSkypeでやって、お互いの苦労をねぎらっている」(江尻氏)。開発もAWSの無料枠を活用し、スピーディな製品リリースを実現した。

お金をかけない商品作りを実現する作戦

 実際、シンカは2014年1月に会社を興し、1月末には製品の売り込みを開始。2月にはファーストユーザーまで決まったという。重要なのは、いち早く製品をリリースし、とにかく売上を上げること。江尻氏は「100点ではなく、30点くらいでとにかく使えるというレベルのものを作った。レベニューシェアの場合、売れない期間が長いとモチベーションも下がるので、1円でもいいから売上を上げる必要がある。プロダクトはユーザーの意見をもらってブラッシュアップしていけばよい」と語る。

 一方、ベンチャーが投資すべき分野として江尻氏が強調したのは、まずマーケティング。ホームページはしっかりしたものを作り、リスティング広告やプレスリリースもきちんと出す。「名刺以上に人が見るものなので、ホームページは重要。見た目がきれいじゃないとお客様が見てくれない」とのこと。美しいホームページを作るため、自分が気に入ったサイトのデザイナーに発注したり、商品への思い入れが深いデザイナーをきちんと雇うべきだとアドバイスした。

 もう1つは問い合わせ対応やクロージングをやってくれる代理店開拓。これに関しては、クラウドがもっとも活用できる分野という。「クラウドを使えば、デモ環境を提供できるし、代理店もすぐにデモができる。TV会議で勉強会や遠隔からのデモ参加も容易に実現できる」(江尻氏)。

スケールできる代理店販売はクラウドが最適

 では、どうやって代理店を開拓するか? 江尻氏は「とにかく展示会に出まくり、人と会いまくった」と語る。ビッグサイトや幕張メッセのイベントは6回参加。「お客様と会えないという声もあるが、こちらははなから代理店を見つけようと思っているので、展示会は最適。なにより大手ITの人たちと出会えるのが大きい」。結果として、シンカは1年で30社以上の代理店が得られたという。

 設立から1年が経ち、顧客は60社を越えた。江尻氏は、「仮説検証を続けてきたら、やっていけるという自信が出た。でも、このペースでは限界であることも理解した」と述べ、走り続けた1年を振り返った。

 江尻氏の講演に引き続き、酪農・畜産向けのクラウドサービスを提供するファームノートの田名辺健人氏がクラウドとの出会い、東日本大震災、北海道への移住など自身の経験を講演。また、データセンター、クラウド、オープンデータ、IT人材定着部会の代表が2014年度の総括を行なうと共に、青森のITに関するパネルディスカッションを行なった。

ファームノートの田名辺健人氏

2015年は「基盤形成」から「協業」のフェーズへ

 第一部を締めたのは事務局の杉山智明氏。杉山氏は、「2年間かけて築き上げてきた基盤を次のステージに移す」という目標の元、来年度に向けた3つの方向性を披露した。

2015年度の方向性について予算要求概略を元に説明する青森県庁の杉山智明氏

 まずは「官民協働でのコミュニティ運営」。現在、県が主催しているコミュニティの運営を実行委員会形式に移し、より民間の声を取り入れるようにしていく。また、エンジニア同士の学びあいの場「ITビジネス道場」の創設、UIターン希望者の交流の促進、若手人材の育成のためのスクールキャラバン、首都圏イベントの若手派遣などを進める。

 また、横の連携を強化した「チーム青森」の結成も進める。横連携でのギルド型受託開発モデル、チームビルディングを前提とした複合的なハッカソン、データセンター活用開発の支援などを推進する。さらにITビジネスや開発のコンテストを実施するほか、展示会でのPRなど事業化支援も積極的に行なっていくという。

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