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年37回のイベント、参加者1000名の1年目を経て見えたモノ

夢が拡がるお役所仕事!青森県にITコミュニティの活用を学ぶ

2014年09月09日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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9月6日に仙台で開催されたJAWS FESTA Tohoku 2014では、コミュニティ型の情報産業振興を推進する青森県の担当者が登壇した。「青森のITビジネスを盛り上げよう!」という目的を掲げ、既存のお役所仕事を超えた取り組みを進めている自治体の姿を見ていこう。

青森のITビジネスを盛り上げる数々の取り組み

 青森県は官民一体で、ITビジネスの育成に務めていることで知られている。昨年は「青森のITビジネスを盛り上げよう!」を旗印に「新時代ITビジネス研究会」を設立。「Rubyビジネスセミナー」や「介護×IT」「農業×IT」などのハッカソン、「オープンデータフォーラム」「青森ITビジネス・マッチング交流会」など9ヶ月で37回ものセミナー・研修を実施し、累計で1000名以上の参加者を集めた。今後も、「雪・インフラ×ITのマッチングワークショップ」などが予定されており、青森や弘前の雪対策チームや道路、都市計画の関係者、土木事業者なども巻き込むという。

数多くのセミナーや研修を実施し、累積で1000名以上の参加者を実現

 各種のITイベントにも積極的に参加しており、昨年の10月に開催された「ITpro EXPO 2013」では佐々木副知事が自らプレゼンに立った。今回のJAWS FESTA Tohoku 2014でも、いち早くイベントの協力に名乗りを上げている。

 こうした施策を矢継ぎ早に進めているのが、今回登壇した杉山智明氏が所属する青森県商工労働部新産業創造課 情報産業振興グループ。とはいえ、杉山氏もITのプロというわけではなく、過去は在留外国人の生活支援やりんごの中国輸出、新幹線建設予算の陳情などを手がけていたという。セッションでは、青森県の情報産業振興の取り組みやITコミュニティの作り方を、あくまで個人の意見をベースに解説した。

青森県商工労働部新産業創造課 情報産業振興グループの杉山智明氏

ITを使えば地方のハンデを克服できるのに……

 異動したばかりの杉山氏がミッションとして課されたのが、まさに新産業の創出だったという。門外漢だった杉山氏が、まず県内のIT企業を調べると、仕事があっても青森には下請けしかないため、自社サービスを作れないという現状に直面する。「県でお金出してなんか作っても、自分たちで売れない。ビジネスや顧客を作るのが難しい」(杉山氏)。隣の会社や団体がなにやっているかわからないにも関わらず、新聞に載るとやっかまれ、同業者同士が足を引っ張ることすらあったという。

県内のIT企業では自社サービスを作ったり、営業が難しい

 一方、エンジニアに聞いてみると、新しい技術に追従し、他社との差別化やシステム負荷の増大に対応する必要があり、こちらはこちらでつらい状態。せっかく東京一極集中でまかなえないニーズがあり、場所にこだわらないでITを使えば、地方のハンデを克服できるのにどうもうまくいかないというのが感想。「せっかく技術を持っているエンジニアがいっぱいいるのに、横のつながりもないし、アイデアがあってもビジネスにつながらない。もったいないと思った」(杉山氏)。

 これに対して、今までの自治体が展開してきた情報産業の振興策は有効だったか? 杉山氏はことごとく「No!」を突きつける。たとえば、技術者育成研修はいつまでも入門編で、ずっと受け身。セミナーはテーマに一貫性がなく、指標が参加者数のため、有名講師を呼んでいい話だなあで終わる。「そのときそのときのバズワードに飛びつくようなセミナーがけっこうあった」(杉山氏)。

 また、協議会はやりやすいメンバーだけで集まり、役所に陳情して終わりだが、当初の役目を終えても解散できない。そして、勉強会はメンバーが固定化し、ネタがマンネリ化する、などなど。事業実績や動員数、予算獲得額など短期的にわかりやすい数値を求めるがため、本来のミッションである情報産業の振興に至ってないというのが、杉山氏の結論。「まずは体質改善から始めましょうという感じだった」(杉山氏)。

 こうした青森県のITビジネスの課題、そして今までの取り組みの問題点などを踏まえ、情報産業振興グループが行き着いたのが、コミュニティという形態だ。個人が自主的に参加するコミュニティは、成果が見えづらい反面、地域や組織の壁を容易に超えられる柔軟性がある。こうしたコンセプトで作られたのが、コミュニティ型の新時代ITビジネス研究会だ。

コミュニティのよいところ、悪いところ

(次ページ、コンセプトは農業!土作りから収穫まで時間をかける)


 

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