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業界人の《ことば》から 第125回

PC事業の手を緩めるつもりはない、デル郡社長

2015年01月06日 09時00分更新

文● 大河原克行

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かなりしっくりくると郡社長

 ここ数年、デルが掲げてきた「ハードウェアベンダーから、ソリューションプロバイダーへのシフト」は、着実に進んできたといえる。

 では、なぜここで、デルは「Integrated IT Company」という新たなメッセージを発信しはじめたのだろうか。

 郡社長は、その理由を次のように語る。

 「ソリューションプロバイダーという言葉には、デルが、ハードウェアベンダーから変革をしていくという新たな方向性を打ち出す上では、非常にわかりやすいメッセージであった。だが、ソリューションプロバイダーへと成長していく過程において、デルは、どんな特徴を打ち出せるのか。その点では、ソリューションプロバイダーという言葉だけでは、伝え切れていなかった部分があった。ソリューションプロバイダーとしてのデルの特徴はどこにあるのか、ということを明確にする点でも、Integrated IT Companyは、よりわかりやすい言葉だといえる」

 郡社長は、この言葉を初めて聞いたときの第一印象を、「かなりしっくりきた」と振り返る。それは、郡社長が指摘するように、「Integrated IT Company」という言葉が、「ソリューションプロバイダー」の延長線上にあるメッセージであり、デルの戦略や方向性には変わりがないという意味が込められていたからだ。

 とはいえ、デルは、Integrated IT Companyというメッセージの発信とともに、いくつかの新たな姿勢を明らかにしている。

 ひとつは、まさに「Integrated」という姿勢を強調している点だ。ここでは、製品のIntegrated、組織のIntegrated、そしてパートナーとのIntegratedという3つの意味がありそうだ。

 郡社長は、「たとえば、Power Edge FXは、まさにひとつに筐体のなかに、ストレージやネットワークなど、あらゆる機能が搭載され、これ一台で、プライベートクラウド環境を実現することができる。また、デルはここ数年で、30社以上の企業を買収し、それらの組織を統合し、製品に組み込むことで、オープンであり、スケーラブルであり、それでいて特徴のある製品や技術を市場投入できるようになった。3つめには、様々なISV(独立系ソフトウェアベンダー)や、ワールドワイドで強化している販売パートナーとの連携強化も、Integratedの取り組みになる」と語る。

 2つめは、技術に対して積極的に語り始めたことだ。

 創業時から、デルの強みはサプライチェーンであり、テクノロジーカンパニーという表現が用いられることはなかった。だが、相次ぐM&Aや、それに伴うソリューションプロバイダーへの進化のなかで、デルには数多くの技術が蓄積されてきた。これまでの汎用的な技術を効率的に組み合わせて、さらに顧客のもとに効率的に届けるというデルの強みに、技術の強みが加わったというわけだ。

 そして、3つめとして、しばらく封印していたかにみえたPCに関する発言についても、マイケル・デル会長兼CEOが積極的に語り始めた点だ。

 郡社長は、「ここ数年は、ソリューションプロバイダーへのシフトを強調するあまり、発言の多くがシステムやソリューションに偏りすぎた点があった」と前置きしながら、「Integrated IT Companyを目指す上では、PCは重要な役割を持つ。また、PCは、全社売上高に占める比率は高く、PCをはじめとするエンドユーザーデバイスがきっかけとなり、新たな取り引きが始まる顧客が多い。新規顧客の獲得という点においても、PCは重要な位置づけを担う」とする。

 デルにとって、PC事業は創業時もいまも、重要な製品であることに違いはない。

 「デルは、PC事業が元気でないと会社の成長がない。PC事業の手を緩める必要はない」と、郡社長は語る。

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