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これはリアルな“ベイビーステップ”か?WTAツアーを支えたSAPのHANA

スポーツにデータがやってきた!女子テニスを分析するSAP

2014年11月06日 09時00分更新

文● 末岡洋子

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スポーツとITの世界がどんどん近づいている。SAPが約1年前から手がけているのは、女子テニスでのデータ収集によって、自分と相手のパフォーマンスを分析すること。データ分析によって、勝負の行方やスポーツの楽しみ方はどう変わるのか?SAPの取り組みをレポートしていく。

速度やスピン数、選手やボールの位置などを収集・分析

 10月後半、シンガポールにオープンしたばかりの新しいスタジアム「Singapore Sports Hub」では、女子テニス協会(WTA)「BNP Paribas WTAツアー選手権」が行なわれていた。屋内会場にはラケットがボールを打つ音、選手がボールを追う足音が響き、名だたるプレイヤーによる接戦が繰り広げられている。

 テニスファンが会場で、あるいはTVで試合を楽しむ一方で、ボールの動き、選手の位置などすべてがデータとして収集されていた。試合が終わると、コーチと選手は収集されたデータから割り出された数値をもとに、自分、そして相手のパフォーマンスを分析する。テニスの世界で本格的な情報活用が始まったようだ。

 データは10台のカメラとコートの脇に立つアンパイアのタブレットから収集していた。1試合当たり数テラバイト級のデータをリアルタイムで分析し、選手やコーチにわかりやすい形でアクセスできるソリューションを開発したのはSAPだ。SAPは2013年にWTAとデータを活用したコーチングソリューション開発で提携。それ以来、SAPのチームは1年以上をかけて、選手とコーチと対話しながらどのようなデータを必要としているのかを探った。

 その結果誕生したのが、コーチングソリューション「Match Insights」だ。SAPのインメモリコンピューティング技術「HANA」とクラウドを利用し、インターフェイスには「Lumira」を用いた。会期中、データは選手とコーチ全員に提供され、試合の前後にデータを分析して戦略とプレイの改善に役立てることができた。

 ボールの速度、スピン数、選手の位置、1回目のサーブが落ちた場所、2回目の場所、サーブを返した(リターン)場所などさまざまなデータを収集し、スコアと掛け合わせて状況から分析することができる。画面は、サーブの方向、サーブリターン、ラリー、ショットプレースメント(ショットが狙った場所に入ること)の4つに分類されており、ドリルダウンしてさらに細かなデータを得ることができる。

コーチと選手は知りたい情報を瞬時に得られる

 これまでにもサーブの数、ダブルフォールトの数など基本的なデータは記録されてきた。だが、データポイントが増えたことで、状況に合わせた分析ができるようになったのは大きな違いとなる。たとえば0-30のときのサーブの成功率は? ジュースの時はどうか?など、コーチと選手は知りたい情報を瞬時に得られるようになった。

SAPのグローバルマーケティング ソリューションアーキテクトのジェニ・ルイス(Jenni Lewis)氏

 14ケ月間、さまざまな公式戦や練習に付き添い、選手とコーチと協力してソリューションを開発したSAPのグローバルマーケティング ソリューションアーキテクトのジェニ・ルイス(Jenni Lewis)氏は、「単にサーブを分析するのではなく、文脈を入れることでさらに深い洞察を得られる。ここがテニスにチャンスがあるとSAPが思った理由だ。テニス業界は統計をハイレベルの形で必要としている」と説明する。ルイス(Lewis)氏が強調するのが、シンプルさだ。集めるべきデータがわかった後は、分析結果を「いかに簡単に、すぐに理解できるシンプルな形で提供するのか」に重点をおいたという。

 WTAは会期中、2015年よりこのコーチングソリューションを試合中に利用できるように規制を変更することを発表した。試合の合間に選手がコーチを呼ぶ”オンコートコーチ”の際にデータにアクセスすることが認められるのだ。「試合中になにが起きているのかを理解できるようになる」とルイス氏。選手は自分が戦略や指示通りにプレイしているのかを数値を持って実感できるという。

(次ページ、ファンを楽しませるための「データ分析」とは?)


 

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