読める本の少なさが、習得する語彙に差を
また、クリントン氏はこんな実例も明らかにする。
「貧困層では、300人で1冊の本を読んでいるという調査結果がある。その結果、一般家庭で育った子供たちに比べて、得ている単語が3000語少ないという結果が出ている。少ない言葉しか学んでいないため、学校に入ってもボキャブラリーが少なく、授業についていくことができない。また、夕飯や朝ご飯をしっかりと食べないと、勉強に集中ができないという問題もある。つまり、創造力が生まれない、創造力が発揮できないという状況が生まれる。言葉のギャップが達成度のギャップにつながり、人生の結果にもつながることになってしまう」
ビル・ヒラリー&チェルシー・クリントン財団では、サンフランシスコのNGOと協力をして、小児病院などを通じて、ツールを提供。情報格差を少なくし、幼児に対して、しゃべりかける機会を増やすことに取り組んでいるという。
サンフランシスコのベニオフ小児病院やオークランドメディカルセンターでは、3年間のプログラムとしてマルチメディアを活用した提案を行い、待合室で本を読んだり、歌を歌ってもらえる環境を整えたのもその事例のひとつだ。
「これはマーク(=ベニオフ)やセールスフォース・ドットコムの協力がなければできないことであった」などと述べ、「小さい子供たちは大切である。一人として残されることなく、すべての子供たちは自分の精神力をきちんと伸ばす必要がある。そのために必要なものを提供されなくてはいけない」とした。
オープンであるはずのインターネットが独占されている
一方で、インターネットの功罪についても言及する。
「私が国務長官を務めていた時に感じたのは、インターネットの自由は、大きなチャンスを生み出すことができ、自分の意見を発信する場でもあり、世界中の人々とつながることができるいうことだった」とし、「インターネットは、表現の自由、言論の自由の象徴でもあり、米国政府は、時間と費用をかけ、努力し、インターネットのオープンな環境を維持してきた。また、西洋の民主主義国は、手を結びながらインターネットをオープンにすることに取り組んできた」とする。
だが、その一方で、「独裁者がいる国ではインターネットを管理し、市民に使わせないという動きがでている。この両翼ともいえる動きはこれからも続くだろう。これによって、インターネットにアクセスできる人とできない人とのギャップの違いが生まれる可能があり、インターネット利用が抑制されている国については、その解放に向けて、我々は説得しなくてはならないと考えている。これは、政府だけでなく、民間企業も共同で取り組まなくてはならないことだ」とする。
とはいえ、インターネットがすべてにおいて有効ではないことも指摘する。
「企業においても、政治においても、長期的な目標を立てるのが難しくなっている。その背景には、技術的変化が激しいことや、すぐに反応が起き、短期的な対応をせざるを得ない環境が生まれていることにある。人は変わっていないが、人に対する批判のスピードや厳しさが加速しているという点は大きな変化だ。世界に貢献したい、リーダーになりたいと思ってもそれがやりにくいといった場面がでているのも事実だ」
クリントン氏は、第32代米国大統領のフランクリン・ルーズベルト氏の例を出しながら、「最も優秀な大統領の一人と言われるルーズベルト氏は、車いすの生活をし、立つこともできなかったが、それが多くの人には知られていなかった。いまのインターネットの社会ではこうしたことが知られないわけにはいかない。もし、この時代であったら、ルーズベルト氏は大統領に選ばれていなかったかもしれない」とも語った。
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