Lyric speaker 写真:SIX
「落ち着いた環境で 聞いてもらおうちゃんと ギターと歌のシンプルな演奏 いつも定まらないセットリスト」
スピーカーから曲が流れはじめると同時に、透過型のディスプレイに歌詞が表示される。SIX(シックス)が開発する「リリックスピーカー」(Lyric speaker)だ。9月13日に代官山で開催されたテクノロジーフェス「THE BIG PARADE」で発表され、見た目の美しさから音楽やデザインなどクリエイターのあいだで話題となった。
まさに自作。ノリはそういう感じ
スピーカー内部にマイクロコンピューターを仕込み、曲の歌詞をシンクパワー社のサーバーから取得、秒単位でタイミングを合わせて表示する。対応している歌詞は国内・国外をふくめて約100万曲。音楽のテイストに合わせてフォントを変えたり、曲間にイメージを挿入できる。歌詞の翻訳機能も搭載している。
大きな筺体にテクノロジーを詰め込んだという外装はまるで自作パソコンだ。
「まさに自作。ノリはそういう感じ」
クリエイティブディレクター大八木 翼氏はそう笑った。
シックスは2013年6月設立、博報堂100%出資の独立企業。カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル金賞を受賞した破壊専用ギター「SMASH」を手がけた斉藤迅氏など、博報堂のクリエイティブディレクター6人が独立し、青山に居を構えている。
シックスはスピーカーのサービス設計やプロダクトデザインを担当し、現在特許出願中。製品化に向け、クリエイターやメーカー、投資会社とのアライアンスなども視野にパートナーを集めている。「『音楽と歌詞を一緒に楽しむ』という思いに共感してくれる方とやっていきたい」
デジタル配信で「歌詞カード文化」がなくなった
発案者はシックス所属のクリエイティブディレクター斉藤 迅氏。スマートフォンやパソコンへのデジタル音楽配信によって、従来CDに付いていた「歌詞カード」がなくなったことに気づいたのがきっかけだった。
「デジタル時代に歌詞カードがなくなったことで歌詞が届きにくくなっている。リスナー側にも、もっと歌詞を味わいたいというニーズがあるんじゃないか、というところからアイデアが出た」
YouTubeでは「リリックビデオ」という歌詞付き動画が流行し、ニコニコでは動画に歌詞を付ける「歌詞職人」の文化も生まれた。音声を文字と共に楽しむニーズは確実にあると踏み、「歌詞の可視化」というコンセプトを中心にアプリ開発など多角的に展開していく計画だ。
「『曲と同期して歌詞を出す』にはいろんな楽しみ方がある。小型化して自宅で安価に楽しめるようなシステム、ライブやDJとして楽しむのも1つあるが、もっと違うサービスやプロダクトとしても出していきたい」
シックス 大八木 翼氏(左)、斉藤 迅氏(右) 写真:編集部