このページの本文へ

科学、IT、市民の協調で「2020年までに個別化医療を主流に」

インテルが語る「生命科学発展のためのIT/ビッグデータ」

2014年07月01日 14時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ソフトウェア、ハードウェアの改善に協力するインテル

 こうした課題解決に向けたインテルの取り組みとして、パランジェペ氏はまず、広範なパートナーとの協業、パートナーエコシステムを挙げた。ソフトウェア開発者やハードウェアベンダーだけでなく、研究機関や医薬企業といったパートナーも多くいる。

 たとえば、OSSのゲノム解析ソフトウェア「GATK(Genome Analysis Toolkit)」では、ソフトウェアの動作を解析した結果、CPUコアなどのハードウェアリソースを十分に使い切っていないことがわかった。インテルの協力によってソフトウェアを最適化することで、最大970倍のスピードアップが図られたという。「3日かかっていた解析処理が、1日で済むようになった」(パランジェペ氏)。

GATKソフトウェアの改善例。従来(左)はCPU、ストレージI/O、メモリとも利用率が低く、最新ハードウェアの持つ能力を生かし切れていなかった。最適化により処理スピードが大幅に向上した

インテルでは幅広い生命科学のOSSアプリ/ツールの改善に積極的に協力し、最適化されたものをリリースしているとパランジェペ氏

 一方ハードウェアでは、デルと協業して「次世代シーケンシングアプライアンス」を開発中であると紹介した。このアプライアンスを使えば、従来7日間もかかっていたRNA配列解析処理が4時間で終わるという。医療現場におけるその“意味”を、パランジェペ氏は次のように説明する。

 「たとえば小児がんの患者に対し、医師が1日3回投薬してその効果を見たいとする。解析に7日もかかるならば無意味だが、4時間で済むならばほぼリアルタイムに投薬の効果が見られる」(パランジェペ氏)

デルと開発中だという生命科学向けHPCアプライアンス。1ラック9FLOPSの処理能力を持つコンピュートノード、数百TBクラスのファイルストレージを搭載している

 このように、個々の患者に対し、投薬や治療行為の効果を見ながら最適な個別治療/予防の計画を立てて進めていくのが「個別化医療(Personal Medicine)」である。ITを通じて患者のさまざまなデータを蓄積、医療者間で共有し、あるいはごく短時間で解析できることの意味は大きい。

ビッグデータに基づく個別化医療の実現には大きな期待が集まる

 パランジェペ氏はそのほかにもHadoopソリューション、「SAP HANA」を採用して超高速な遺伝子解析を行うMKI(三井情報開発)のソリューション、スーパーコンピューターにより遺伝子情報のシミュレーション解析を行う東大ヒトゲノム解析センターのソリューションなどを紹介し、それらの背景にインテルのテクノロジーが存在することを強調した。

 「ここまで見てきたように、ITは科学の進化に追いつこうと努力してる」(パランジェペ氏)

(→次ページ、社会全体の協調で「2020年までに個別化医療を主流に」)

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード