四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第138回
開発者もうまく言い表せない、だから素晴らしい
KORG DSN-12はシンセの原体験と未知の世界をもたらした
2014年06月28日 12時00分更新
初めてシンセで遊んだあのときの感覚
―― 普通に説明したらシンセにオシロが付いてます、という話になってしまいますが、これはもう別のものになってますよね。
佐野 最近のEDM系の打ち込みは緻密になってきて、聴いていると疲れる。その対極にはあるかなと思いますね。単純な波形が鳴っている、そこにフィルターを少しだけ閉めて、ピークをかけてやる、そうすると目の前の波形は鮮やかに変わってゆく。もうそれだけでいいという。
阪上 これだけでシャンルができてしまいそうな。
福田 アンビエントのチルウェイヴを超えたような何かがありますよね。
金森 初めてアナログ・シンセサイザーで遊んだ、あのときの感覚に近いですね。触っているだけで、シンセから強烈なメッセージを受ける感覚。あれが画像から来るような感じですよね。
佐野 そうそう、一番最初にアナログシンセを触ったときって、もしかしたら、こういうことだったのかもしれないですね。そこに曲を作ろうなんて意志もなく。ただ単に取り憑かれたようにしてツマミを動かしていた。それで親から「うるさい!」って、こっぴどく怒られるんです、僕の中学生時代の話ですけど。でもね、波形を見ると曲作りは確実に変わりますよ。
福田 SoundCloudなんかを見ていても、これはどういう波形をしているんだろうって、そっちの方が気になってきますからね。
阪上 これを一度触ってから、iMS-20に戻ってくると、出ている波形が想像できるようになっているんですよ。今こんな波形で鳴っているんだろうなって。
佐野 こんなに面白いということを知っている人は、そんなにいないんじゃないですか?
金森 三枝(文夫氏・コルグ監査役)は知っていたと思いますよ。
―― 前の取材で、三枝さんは測定器マニアだってご自分でおっしゃってました。その流れで発振器を作ったりしているうちに、それがシンセの素になったと。
阪上 家に5台オシロスコープがあって、iOSのアプリも全部持ってるらしいですよ。
福田 社長(加藤世紀氏・コルグ代表取締役)も知っていたと思います。4年くらい前にiMS-20やiELECTRIBEをお見せしたときに、話の流れで「オシロスコープでリサジューは?」という話が出たことがありました。そのときは「リサジュー」という、その言葉自体に驚いたのですが、今になって、ようやく意味がわかりました。
―― だったらコルグさんで3Dのオシロスコープを作ればいいのに。シンセのオプションとして最高じゃないですか。
佐野 それはですね、最初の起動画面を見てもらうとわかるんですが、こういうのがあったらいいな、という画面がですね。
福田 これが次の企画案で上がってきたら怖いですね。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
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