Primeが成功の鍵を握る?
Amazonは電子書籍リーダー「Kindle」でハードウェアに参入、2011年にはAndroidをフォークした独自OS搭載のタブレット「Kindle Fire」でタブレットに進出した。Kindle Fireは安価であることが大きな特徴となっており、少なくとも米国ではAndroidタブレットのシェア増に貢献したと評価できる。なお、2年以上経過した現在のシェアは2%程度。これは4%近くあった前年同期から落ちているのだ。
だが、AmazonはSamsungやHTCとは根本から違う。Amazonの本業は小売であり、ハードウェアを販売することで開発コストを回収し、さらには収益をあげなければならないメーカーとはビジネスモデルが異なる。実際、Kindle Fireのビジネスモデルはというと、価格を低く抑えてハードウェアではたとえマイナスだったとしても、コンテンツの販売により長期的に収益を得ればよい、というものだった。
ところが、Fire PhoneはiPhoneやGALAXYと比較されるエリアだ。実際、Fire Phoneを発表した同社CEOのJeff Bezos氏は、Fire Phoneのカメラ機能をiPhone 5SやGALAXY S5と比較している。Amazonは何を狙っているのか?
おりしもスマートフォン市場の主戦場はローエンドに移っており、ハイエンドは難しいセグメントになっている。安価なAndroidスマートフォンが出回り、Microsoftの「Windows Phone」も価格を下げるべくライセンス無料化に踏み切っている。Mozillaの「Firefox OS」もローエンドから攻める戦略だ。Amazonがハイエンドを持ってきた理由は、逆にここにあるのかもしれない。安価なスマートフォンに埋もれるよりも、明確に差別化を図ったハイエンドで勝負に出た……のだろうか?
AmazonのBezos氏はRe/Codeのインタビュー(http://recode.net/2014/06/20/bezos-amazon-fire-phone-was-a-long-time-coming/)で、「既存のPrimeユーザーなどAmazonのエコシステムを利用している顧客」とターゲットを説明している。Fire Phoneの構想は4年前から、と述べており、十分に戦略を練った上でのスペックと価格のようだ。
モバイルのエコシステムに入る必要性
台数ではなく、本業へのインパクト重視!?
AmazonにとってFire Phoneの位置づけは、単なるショッピング端末ではないように見える。まずはPrimeユーザーをターゲットにして、目の前にあるものをFireflyでAmazon検索して購入してもらう。モバイルでの検索や広告のパイを獲得し、取引高がそれなりになってくればモバイル決済市場にすら影響を与えることができるだろう。この分野はPC向けのウェブでスタートしたAmazonにとっては脅威でもあるはずだ。
さらにはデジタルコンテンツ事業の拡大にも乗り出している。AmazonはFireflyとDynamic Perspectiveをサードパーティーの開発者も利用できるようSDKを公開する。このほかにも、Amazon AppstoreではBlackBerryと提携を結び、BlackBerryユーザーがAmazon Appstoreからコンテンツを購入できるようにすることも発表している。このような提携は他のメーカーとも積極的に結ぶとのことだ。
Kindle Fireの経過を考えるとFire Phoneのシェアも大きくは伸びないかもしれないが、一定台数を販売できれば小売業へのインパクトはあるのかもしれない。そしてそれこそ、Amazonが狙っていることではないかと思える。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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