ミュージシャンは設計者が予想しない使い方でいい音楽を作る
―― ジミヘンのウッドストックでの使い方はどう思われましたか?
三枝 Uni-Vibeを使っていたと知るまでの間にいろいろな情報が入っているので、当時の正確な印象は思い出せないんですけど、その数年前に「エレキ禁止令※2」というのが日本であったんですね。
―― ああ、あのPTAの皆さんの。
三枝 青少年が不良になるというので禁止になったんですが、あれから間もないんですよ、ジミヘンがあの演奏をしたのは。でもジミヘンの演奏を見ますと、アメリカの国歌をね、あんな格好で、つまり不良みたいでしょ、あれ。
―― ……みたい、なんてもんじゃないですよね。
三枝 だから、何であんなバカバカしいお触れを出したんだろうと思いますよ。
―― 何を使ってどう演奏するか、とやかく言っても意味は無いですよね。と言いつつ、僕らはNuvibeをどう使えばいいでしょう?
三枝 ミュージシャンというのは、設計者が予想しない使い方でいい音楽を作るなと、ずっと昔から思っていました。だから、ああ、音楽家というのはすごいんだなと。
―― 直接確認したわけではないので真偽の程は定かではないですが、レオ・フェンダーはジミヘンの演奏を見て「ビブラート・アームはああやって使うものじゃない」と怒っていたという逸話もありますが。
三枝 いや、嬉しいですよ。だって、そういう風に新しい使い方で、想像も付かないような新しい音楽ができる。設計者にとってこんな嬉しいことはないですよ。
※2 1965年10月、過熱するエレキブームに対して、栃木県足利市教育委員会が青少年の育成に好ましくないとして、エレキギターの購入、バンドの結成、コンサートへの参加を禁止。その後この動きは全国的に広がっていった。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
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