4月30日にサンフランシスコでFacebookの開発者イベント「F8」が開催されました。この場で創業者兼CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、10周年を迎えた同社のテーマに「Stable Mobile Platform」(安定したモバイルプラットホーム)と「People First」(人が第一)という2つのキーワードを掲げました。
それまでFacebookの社内に貼られていたポスターには、「Move Fast and Break Things」と書かれていました。素早く破壊的なイノベーションを起こそう、というハッカーマインドにあふれたカルチャーの象徴とも言えるフレーズです。
しかし「F8」でのザッカーバーグ氏は、同じデザインのまま「Move Fast with Stable Infra」というフレーズに置き換え、会場の笑いを誘っていました。素早く動くことは変わらないのですが、安定したインフラを基盤としつつ実行しよう、という姿勢の変化を受け取ることができました。
このフレーズに込められたインフラというフレーズは、ソーシャルプラットホームや開発者向けの基盤という意味合いですが、Facebook社員の普段の仕事のインフラとなっているキャンパスは、どうなっているのでしょうか。そんな事を意識しながら、Facebookのキャンパスをご紹介します。
おなじみのいいね!マークが大きく設置
「1 Hacker Way」
Facebookの本社は、シリコンバレーの街メンロパークにあります。住所は「1 Hacker Way」。キャンパスの入口には、おなじみの「いいね!」の親指が大きく掲出され、そこがFacebookの本社であることが一目でわかります。記念写真のスポットでもあり、たくさんの人がこの看板の前で写真を撮っていました。
Facebookの本社は、ダンバートンブリッジというサンフランシスコ湾にかかる最も南の橋のたもとにあり、クルマでのアクセスはしやすい場所といえます。例えば筆者は、シリコンバレーから橋の向こう側、イーストベイと呼ばれる地域に住んでいますが、サンフランシスコ市内やUS101号線に巻き込まれることなくたどり着ける点で便利です。
しかし、キャンパスの周りにあるのは、サンフランシスコ湾沿いの湿地帯と橋くらいで、向かい側の広い土地は何らかの巨大建造物が建造中。お店に行くには、近くに起点があるユニバーシティ・アベニューを15分ほど走ってカルトレインのパロアルト駅周辺に行かなければなりません。
15番のビルからキャンパス群の内側に入り、ウッドデッキを抜けると、建物に囲まれた広いハッカースクエアにアクセスすることができます。このキャンパスはもともとSun Microsystemsが使っていた場所で、改装してFacebookが利用しています。現在SunはOracle傘下。テクノロジー企業の栄枯盛衰を感じることができるエピソードです。
キャンパスの地面には地図が描かれており、自分が今どこにいるのか迷わずに済みます。コンピューター的な手段を使ってはいませんが、キャンパスという空間がハックされていることを早速感じることができました。Facebookが利用し始めて、こうしたハックが随所に見られるようになりました。
ハッカーのためのオープンな街
Facebookのキャンパスは、ハッカーのためのオープンな街、というコンセプトで整備されています。前述の通り、職場としてのキャンパスをハックするという意識とともに、カリフォルニアらしい自分で作ってしまうDIY精神も随所に見かけることができます。
キャンパスは横に長く広がった通りを挟むようにして、全部で18のビルから成立しています。まずはビデオにまとめたので、ご覧ください。
まるで本当の街の賑わっている通りのような錯覚すら覚えるのですが、ここを行き交っている人々は、全員がFacebook社員だということをふと思い出し、その規模の違いを見せつけられるようです。
前述の通り、Facebookのキャンパスの周りにお店などはなく、車でキャンパス外へと出かけなければならないため、食事以外にも、様々な機能が用意されています。
この通りに面した1階部分には、無料の飲食店や食堂(一部有料)だけでなく、ゲームセンターや理髪店などが並んでいます。また、Facebookのロゴが入ったアパレルやグッズなどを扱うお店や、最近では銀行までできました。
キャンパスの中に生活を取り巻く快適な機能を取り入れることによって、そこで働く人が良いパフォーマンスを発揮してくれるように、という文字通り「仕事のインフラ」がそこに広がっていました。こうした環境整備はシリコンバレーの様々な企業が積極的に取り組んでいますが、Facebook社内では少し異なる雰囲気を見ることもできました。
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