クラウドだから成し得る
日本交通におけるクラウド活用は、配車アプリ全国版の開発に端を発する。
2011年1月の日本交通版(初版)のリリース後、利用者から数多く寄せられた「配車エリアを東京以外の地域にも広げてほしい」との要望を受けて開発されたのが全国版だ。地方タクシー会社の無線システムと連携し、東京以外の地域でもアプリ経由の配車を実現する仕組みである。
全国版は、昨年末に単体累計約70万ダウンロードを突破。アプリを採用する加盟タクシー会社も100社を超え、「全国47都道府県に少なくとも一つは加盟タクシー会社がある」(野口氏)。
ただし、開発の時点では、アプリを使う利用者や加盟するタクシー会社の数は予測できなかった。そこで、日本交通が選んだのがクラウドの活用だ。全国版の開発・実行環境として、「ウィンドウズ アジュール」のPaaS(プラットホーム・アズ・ア・サービス)を採用したのである。
クラウドならば、利用者やアプリの「成長」に合わせて必要な分のITリソースを自在に確保でき、調達の手間やコストを最小限に抑えられる。しかも、アジュールのPaaSは、システム運用管理の負荷もかからない――。
その利は大きく、「クラウドでなければ全国版の立ち上げは不可能だった」と野口氏は言い切り、こうも続ける。
「今後は、配車アプリ以外のシステムもすべてアジュールに移行し、配車アプリの全国版と同様のモデルで他のタクシー会社に使っていただく」