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アール・アイの“無茶ぶり”に応えたプライベートクラウド

2014年02月05日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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既存のサーバーを活かしてクラウド構築

 2013年の夏、アール・アイはエーティーワークスのレンタルプライベートクラウドをベースに、専用サーバーベースのAirBackのインフラと、東京江東区などにあったSecureBackのインフラを統合。富山と東京にそれぞれに同じシステムを構築することで、ロケーションを冗長化し、データを多重で保護するようにした。システムは約半年をかけて徹底的に検証した後、先頃2014年1月にシステムの正式運用にこぎ着けた。

アール・アイのシステム構成図

 データセンターを構える富山というロケーションに関して、小川氏は「災害対策を売りにしているので、複数のデータセンターを持っていて、両者が100km離れている、電力会社が分かれていることは必須でした。震災を踏まえて、同じプレートにいないという例も重視しました」と語っている。

 面白いのは、東京のプライベートクラウドには、本来使用済みになるはずだったキャンペーン用のサーバーをそのまま流用した点だ。既存システムを無駄にしない提案ではあるが、ハードウェアの販売をメインとするメーカー製のクラウドではまず実現しない選択肢だろう。アール・アイが評価したエーティーワークスの柔軟性はこうしたところにも現れている。

 一方、エーティーワークスも実環境を前提としたタフな検証を経て、得られたノウハウは実に大きかったという。

 一例として挙がったのは、分散ストレージの性能だ。レンタルプライベートクラウドが採用するSheepdogはサーバーを追加することで、スケールアウト可能なOSSの分散ストレージシステム。KVMやQEMUで標準サポートしており、実容量に比べて多くの容量を仮想的に提供するシンプロビジョニングにも対応する。また、データは三重コピーされるので、信頼性も高い。

Sheepdogの多重化の仕組み

 既存のサーバーを流用して構築された東京のクラウドは、富山のクラウドと利用しているサーバーが異なる。東京では20TBくらい積める2Uのハイエンドサーバー3台を使っているが、富山では2TBのディスク1本のみ搭載するエーティーワークスのハーフ1Uサーバー15台でクラウドを構成している。しかし、両者をシステムとして検証してみると、Core2 Duoのモバイル版を使った富山のサーバー15台の方が、12コアのXeon E5を採用した東京のサーバー3台よりも高速だったという。「正直、大人と子供くらいのスペックの差がありますが、分散ストレージの場合、サーバーの台数が多いほど、性能が高くなります。しかもバックアップサービスは、とにかくディスクのI/Oが半端なく多い。ですから、システムを構築し、検証してみないと、実際の性能がわからないのです」(小川氏)。

 その他にも、WindowsやLinuxの混在環境でのパフォーマンスや、遠隔サイトでの分散ストレージの同期など、さまざまな環境での実検証が行なわれた。その結果、レンタルプライベートクラウドはリリース直後なのにも関わらず、かなりたたき上げられているという。

自社開発のコントロールパネル

単なる顧客ではなく、ビジネスパートナー

 今後の計画について、小川氏は「アンチウイルスと同じようにバックアップはもっと市民権を得てもよいと思います。最近はクラウドの台頭で、外部にデータを出すことに抵抗が薄れてきているので、エーティーワークスさんといっしょに安心・安全なバックアップ環境を提供していきたいです」と語る。

アンチウイルスと同じようにバックアップはもっと市民権を得てもよい(小川氏)

 エーティーワークスの高瀬氏は、アール・アイは単なる顧客ではなく、ビジネスパートナーであると断言する。「通常のプライベートクラウドのルールは、インフラ基盤を構築するだけで、仮想マシンやその上に載るアプリケーションはあくまでお客様の管轄になります。ですけど、今回はシステム開発を完全に共同でやっています。うちの技術陣は、もはやAirBack/SecureBackの“根っこ”にあたるところまで熟知していますよ」(高瀬氏)。

 とはいえ、アール・アイは想定する顧客の中ではビッグユーザーで、実際のレンタルプライベートクラウドは中小企業がターゲットになる。「クラウドで入ってもらって、段階的にホスティングやサーバーにいってもよいと思います。最終的には卒業してしまうかもしれないですけど、中小企業のお客様の成長を支援していきたいんです」と高瀬氏は語る。インフラだけでなく、システム構築や運用まで含めた手厚いサポートをターゲットとなる中小企業に提供するのが、エーティーワークスの進むべき道だという。

(提供:エーティーワークス)

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