「ドコモを10年以内に超える、という目標を達成できた」。7月30日、2013年4〜6月期の決算説明会の壇上でソフトバンクの孫 正義社長は笑顔を見せた。孫社長は営業利益や累計契約数などを例に挙げ、それぞれでNTTドコモを上回ったと話したのだ。
2013年4〜6月期の決算資料から通信キャリア大手3社の数字を比較すると、売上高はNTTドコモの1兆1136億円に対し、KDDI(au)は1兆24億円、ソフトバンクは8811億円で、ソフトバンクはいまだ3位に甘んじている。
ところが営業利益はドコモの2475億円に対し、KDDIは1787億円、ソフトバンクは3910億円。ソフトバンク、ドコモ、KDDIの順に並ぶ。孫社長の言う通り、営業利益では確かにソフトバンクはドコモを抜いている。
注目は契約者数だ。6162万件を誇るドコモがいまだ国内最大の通信事業者として君臨している。2位はKDDIの3838万件、ソフトバンクは3329万件で最下位。数字にはかなり開きがあるように見える。
しかし、ソフトバンクが買収した通信事業者の契約数を考慮すると話が変わる。国内傘下のイー・アクセスとウィルコムの契約者数を加えると4283万件になり、一気にKDDIを抜き去って2位。さらに7月に子会社化した米スプリント社も含めれば、契約者数は9804万件までふくれあがる(スプリント社の契約者数は2013年3月末時点)。孫社長はこの数字を根拠に「ドコモを逆転」と言っているわけだ。
国内に限っても、ドコモは契約者数の伸びで2社の後塵を拝する。純増数はドコモがわずか8.7万件にとどまるのに対し、KDDIは67万件。ソフトバンクに至っては81万件で、実にドコモの9倍だ。単純にこのペースが続くと、ソフトバンクは売上高でも2019年にKDDIをとらえ、2023年にはドコモを抜き去るペースだ。急速に巨大化するソフトバンクに、国内王者ドコモが苦戦を強いられる姿が浮かび上がる。
一方で、ソフトバンクにも欠点がある。解約率だ。ソフトバンクは正確な解約率を公開していないが、同社のホームページに公開されたグラフを見ると約1%で、3社を比較すると「ナンバーワン」。ドコモは0.86%、KDDIは0.56%にとどまっており、実はKDDIには固定ファンが多いことが分かる。
いま、数字の上ではソフトバンクに勢いがあることは明白だが、各社の戦略はそれほど単純ではない。マーケットは限りなく伸び続けることもなく、また次の一手次第では各社の勢いが逆転することも大いにあり得る。発売中の「アスキークラウド10月号」では、なぜKDDIは解約されにくいのか、傷だらけの国内王者ドコモの今後など、各社のキーパーソンのインタビューを交えて各社の戦略の違いを浮き彫りにしている。
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