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最新クラウドサービス選びの勘所第1回

アウトソーシングという視点から見るクラウド・サービスの選び方(前編)

よりよいクラウド選びのためにITアウトソーシングを知る

2013年08月26日 08時00分更新

文● 入江宏志/ディメンションデータジャパン シニアEAコンサルタント

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人間とコンピュータの“相性の悪さ”が生んだITアウトソーシング

 「クラウド・コンピューティング」という言葉が生まれてから7年がたち、IT業界の人間にとってはごく日常的な言葉となった。その一方で「アウトソーシング」という言葉については、個々人の経験や知識によってまったく違うイメージが持たれるようだ。

 元来、人間とコンピューターは相性が悪い。人間は「高速な計算能力」や「大量のデータ記憶(記録)能力」といったリソースを利用する手段としてコンピューターを開発した。だが現実には、そのコンピューターを動かし維持管理するための対価として、高いスキルを持った人的リソースを大量に投入することを余儀なくされた。

 その課題を解決すべく、この40年間、人間とコンピューターの関係を切り離し、コンピューター・リソースだけを享受できるようにするべくさまざまな手法が試されてきた。その一つが「ITアウトソーシング」である。ITベンダーにコンピューター・システムの運用管理を外部委託することで、企業は自ら人的リソースを投入する負担から解放される。

 しかし、実際にITアウトソーシングの利用が進むと、今度はアウトソーシング先のITベンダーを管理するノウハウが必要となった。そしてこの面倒なITベンダー管理自体も外部委託したいという発想が、クラウド・コンピューティングにつながったと言っても過言ではない。クラウド・コンピューティングの登場によって、利用者はITベンダーの管理からも解放され、ようやくコンピューター・リソースの利用だけに専念できるようになったのである。

ITアウトソーシングの“輸入”と歴史的発展

 ITにまつわるアウトソーシング・サービスは、これまでどんな歴史をたどってきたのか。国内におけるアウトソーシングの変遷を見てみよう。

ITアウトソーシングの歴史的変遷

 日本にITアウトソーシングが“輸入”されたのは1993年ごろのことだ。外資系ITベンダーが中心となって、海外市場で蓄積したノウハウを盛り込みながら、まずは先進的なユーザー企業への導入を進めていった。当初は部分的な導入にとどまっていたが、2000年ごろには本格的な導入段階へと移行した。

 このITアウトソーシングを補完するものとして、2000年前後にはサーバーのハウジングやホスティングのサービス、数多くのxSP(ASP、ISP、MSP、SSPなど)も誕生する。プロバイダーのデータセンター内で稼働するアプリケーションを月額固定料金で利用できるASPに注目が集まったほか、インターネット・データセンター事業者も、低価格なホスティング・ビジネスを売りに浸透していった。当時IBMのe-businessやNetGenビジネスといった組織に所属していた筆者は、xSPやインターネット・データセンターという新しいタイプの事業者の破壊的なパワーを感じたものだ。

 ITアウトソーシングの契約期間は10年間が主流である。本格導入が始まった2000年からその更改のピークを迎える2010年までの10年間に、ITアウトソーシングはさらに大きく変貌した。2003年ごろから「オンデマンド(On-Demand)」という言葉がよく使われるようになり、ITアウトソーシングは次の3つに分離していった。

(1)ITインフラ・オンデマンド
(2)アプリケーション・オンデマンド
(3)ビジネス・オンデマンド

 ホスティングやハウジング、レンタル・サーバーなどのサービスは(1)ITインフラ・オンデマンドに分類される。ITインフラにかかるコストが削減できることが売りであり、これが仮想化技術と結びついて現在のIaaSやPaaSへとつながっていく。

 (2)アプリケーション・オンデマンドは、同種のアプリケーションを利用する複数の企業に対して、共同利用型のデータセンターから標準化されたアプリケーションを提供するというものだ。これも主眼はコスト削減である。有名な事例としては、多数の地方銀行向けに勘定系システムを提供するNTTデータ地銀共同センターがある。

 2000年ごろからビジネスが立ち上がっていたASPは、クラウド・コンピューティングの世界でシングルテナントからマルチテナントへと変貌し、SaaSへと進化していった。この過程でASPは自らホスティングやIaaSを活用し、従量制課金という新たな料金モデルも手に入れた。

 (3)ビジネス・オンデマンドは、「BPO(Business Process Outsourcing)」や「BTO(Business Transformation Outsourcing)」などと呼ばれるものだ。“Transformation”の言葉が示すとおり、その目的はコスト削減よりもむしろ業務変革にある。通常のアウトソーシングでは業務改善を伴わずに運用だけを委託するが、BPO/BTOは対象業務の「改善」から運用までを外部委託するものである。

 BPOをクラウド・サービスとして、マルチテナント型で提供するのが「BPaaS(Business Process as a Service)」であり、今後3年から5年をかけて浸透していくものと考えられる。BPaaSは、SaaSでは物足りない機能をユーザーが自ら開発する際に役立つ。疎結合で提供されるビジネス・プロセスを組み合わせることにより、競争力のあるビジネス・モデルが構築可能となる。ただし、日本には日本特有のビジネス・ルールがあるため、外資系プロバイダーが提供するBPaaSではうまくニーズに適合しない可能性がある。独自のBPaaSを国内ベンダーが提供し、これにより競合ユーザー企業間でビジネスそのものが差別化されるのは確実である。

クラウド、ホスティング、ITアウトソーシングはどこが違うのか

 ここまで見てきたとおり、パブリック・クラウド、ホスティング、ITアウトソーシングは、一つの系統としてつながっている。大まかにわかりやすくまとめると、それぞれの違いは「契約期間」と「カスタムメイドの度合い」にある。

アウトソーシング、ホスティング、パブリック・クラウドの違い

 クラウドのブームに便乗してか、最近はさまざまなITアウトソーシング・サービスに“クラウド○○”と名付ける風潮もあるようだ。だが、そのサービスが「個別見積もり」料金で提供されている時点で、クラウドを名乗るのは無理があると言えるだろう。本来、クラウド・サービスでは料金体系も標準化されているべきだからだ。

 ITアウトソーシング、ホスティング、パブリック・クラウド、それぞれに特徴があり、異なるメリットがある。後編記事では、プロバイダーが提供するコンピューター・リソースを適切に選択するポイントについて考えていく。

(→後編記事へ続く)

筆者紹介:入江宏志

ディメンションデータジャパン シニアEAコンサルタント。 クラウド・コンピューティング、ビッグデータ、GRC(ガバナンス、リスク管理、コンプライアンス)、ITアウトソーシング(ITO)、次世代情報システムやデータセンターなど幅広い領域を対象に、新ビジネス・モデル、アプリケーション、ITインフラの3つの観点からコンサルティング活動を行っている。29年間のIT業界経験の中で、第4世代言語の開発を経て、IBMとオラクルで首尾一貫して先端領域を担当してきた。


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