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業界人の《ことば》から 第45回

大ボラを吹く、ソフトバンクは世界一になる

2013年06月25日 09時00分更新

文● 大河原克行

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控えめに時価総額で世界のトップ10に入りたいと言ってきたが……

 孫社長は、「これまでは控えめに、時価総額で世界のトップ10に入りたいといってきたが、これは私の性格にあわない。世界一を目指す」とし、「ただし、世界一になる時期の期限は切っていない。だが、必ず世界一の会社になる。利益、キャッシュフロー、株式価値、あらゆる面で世界一の会社になる」とした。

 だが、その一方でこんなことも語る。

 「世界一になることは、企業としての強さの証であり、株主に対する責任。しかし、世界一は目標ではなく、スタートラインである。また、世界一になったとしても、一時的なものではいけない。最も大切なことは、世界一になったときに人々に、世界に、なにを残せるか、あるいはITによって人々のライフスタイルを革新し、人々に感謝され、尊敬されることができるか。そこに我々の存在意義がある。ソフトバンクが目指しているのは、情報革命で人々を幸せにしたいということ。それが、我が社の唯一の願いである」とした。

 孫社長の目標は、300年以上成長し続けるDNAをもった企業集団の確立。そうした体質も植え付けていく考えだ。

営業利益1兆円、そして世界一だ

 ソフトバンクは、2013年度に営業利益で1兆円以上を目指す計画を明らかにしている。

 株主総会でも、「今年は国内営業利益で1兆円を超えることが確実になった」と前置きし、「一昨年は期限を切って、201x年までには1兆円を超えるとしていたが、昨年はそれを前倒しして、2016年とした。今回は、それをさらに前倒しし、今年超える目処が立った。日本で営業利益で1兆円を超えた会社は2つしかない。ひとつはNTTグループであり、1兆円に到達するまで118年かかった。トヨタ自動車は65年かかった。ソフトバンクは、これを33年でやる。史上最短記録をつくる」と意気込んだ。

 1兆円の先にあるのが、世界一ということになる。

 孫社長は、「成長はまだまだ続く。さらなる成長への自信がある」と語り、「自信を持っている理由は、スマホの全盛期がいまからやってくるという点。ソフトバンクと他社との違いは、他社が電話会社をバックグランドとしているのに対して、ソフトバンクは唯一、インターネットをバックグランドにした企業であること。スマートフォン時代に入ったこの数年の間に、他社は2時間以上、3万人以上に影響を及した報告義務のある通信障害事故を10数回も起こしているが、ソフトバンクは、700日間近く無事故。基地局の設置を前倒しでやっており、通信速度の遅さ、パケ詰まり、通信障害という3点の課題において、最も優れているのがソフトバンク。世界中の通信関係者が、ソフトバンクのネットワークは世界一だと絶賛している」と胸を張る。

 インターネットをバックグランドにした会社だからこそ、スマホ全盛のインターネット時代において強みを発揮できるとする。

スプリント買収で世界に羽ばたく

 6月24日の米スプリント・ネクステルの株主総会では、米通信事業者第3位のソフトバンクによる買収が決定し、今後、米国でも事業拡大に挑むことになる。

 「米国の人口は日本の2.5倍であり、GDPは2.6倍、携帯電話の契約数も2.5倍。世界で最も大きな国に挑戦する」と強い意志をみせる。

 この買収によって、世界で第3位の売り上げ規模を誇る通信事業者となることで、端末の調達や最新設備の調達でも、ボリュームを背景にした商談が可能になり、日米における優位性が発揮できるとする。

 実は、ソフトバンクの株主総会と同じ週に、NTTドコモ、KDDIの株主総会も開催されたが、話題が国内の携帯電話事業の話題に終始していたのに比べると、ソフトバンクの株主総会の話題は世界に広がり、次元の差を感じた。

 ソフトバンクの社外取締役を務めるファーストリテイリングの柳井正会長は、「孫社長を見ていると、ハラハラすることもある。大きな勝負のときにこけないようにすれば、日本の歴史だところか、世界の歴史に残る経営者になれる」とする。

 世界の歴史に名を刻む経営者になることができるのか。新たな大ボラは、孫社長の新たな挑戦が宣言されたといっていい。

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