DS-DAC-10の空気感や音の広がりは
5万円を払ってでも味わいたい!
では、さっそく音を聴いてみよう。まず、先ほどと同じボーカル曲を同じ44.1kHzで聴く。音像がひときわくっきりと浮かぶ印象だ。絵画で言うなら輪郭を太書きでふちどったようなくっきり感ではなく、より鮮明で生き生きとした感じだ。
ずばり言ってしまえばリアルな音だ。音数が増えるとか、情報量が格段に多くなったわけではないのだが、歌声のリップノイズやかすかな吐息などがよりクリアになり、すごく生々しい印象になる。
もともとコルグはプロ用の録音機材としてDSDを積極的に採用してきており、DS-DAC-10もそのノウハウを生かして民生用に作ったもの。そのためか、音もプロオーディオっぽい、忠実度というよりリアル感を強く感じる音になっている。
これを、比較のために手に入れた同じアルバムの192kHzの音源に切り換えてみる。すると、音がより滑らかになり、ニュアンスの豊かさがさらに出てくる。空気感やステージの広がりもより見通しがよくなる。
映像で言うならばベールを剥いだような見通しのよさだ。このS/N感のよさや、出音の勢いのよさは、かなり魅力的。アコースティック楽器の繊細さな響きもよく出るし、逆にエレキギターの激しい音もエネルギッシュに鳴る。さすがは5万円をかけただけのことはある。
そして、ハイレゾ音源のきめ細やかな再現性、空気感やステージの描写は見事だ。USB DACによって違いはあるものの、ハイレゾ音源のよさがしっかりと出ていると思う。空気感などと言うと、音楽そのものにはなくてもいい思うかもしれないが、あるとないとでは大違いだろう。客が誰もいないステージでの演奏と、超満員の観衆を前にした演奏が大きく違うのと同じだ。
情報量が豊かなので、音楽を聴いていていろいろなことに気付く。ギターはコードを抑える指の動きがよくわかるし、クラシックはいわゆる主題と言われるメインの旋律がどのように組み合わされているかなど、楽曲の構成もわかりやすく、難しいクラシック解説書の内容が初めて理解できたと感じるほどだ。
ハイレゾの極み!? 次回はDSD再生に挑戦
ハイレゾのよさは、従来の録音された音楽とは次元が異なるほどの、生の音に近い感触が得られることだろう。それは、ライブコンサートによく通うような人ならば、絶対に実感してもらえると思うし、こんな音が聴けるのならば、自分が行ったライブのCDももっと楽しく聴けるとわかるはず。
今のところ、ハイレゾ音源を喜んでいるのは、オーディオに詳しい人が多いのは確かだが、ハイレゾ音源はオーディオにはあまり関心がないけれど、楽器も演奏するし、音楽を生で聴くのも好きという音楽好きにこそ、おすすめしたいと筆者は考えている。
ここまでの4つのSTEPは、なるべく簡単に、しかもローコストで実現できるように考えたが、それでも一足飛びにSTEP 4まで行くのは簡単ではないだろう。それでも、ゆっくりとでいいので、いつかSTEP 4まで来てほしいと思う。これだけの素晴らしい世界を見ないままでいるのはもったいない。
そして、最終回となる次回は、さらにその先へ行く。いよいよDSD音源の登場だ。DSD音源をPS3で再生する方法など、再生方法もいろいろと紹介していくので、お楽しみに。
■Amazon.co.jpで購入
この連載の記事
-
第3回
AV
意外に敷居は低かった!? プレステ3からはじめるDSD -
第1回
AV
FLACより高音質? DSDって何!? ハイレゾ音源10の疑問 -
AV
超高音質オーディオ配信で変えるPCオーディオ環境 - この連載の一覧へ