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2012年10〜12月決算を発表

アップル、過去最高の業績—しかし株価10%以上下落のなぜ?

2013年01月24日 19時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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Appleに対する懸念とは何か?

 Reutersの報道によれば、Apple決算発表前のアナリスト予測の集計(Thomson Reuters I/B/E/S)は、売上が547億3000万ドル(約4兆8939億円)で実数(545億ドル/約4兆8669億円)はわずかに届かず、一方でEPSは13.47ドルの予測値を上回った。Appleは第2四半期の業績予測として売上が410〜430億ドル(約3兆6613億円〜約3兆8400億円)になると発表しているが、投資家らの業績予測は450億ドル(約4兆186億円)となっており、この水準に届いていない。

 また、Appleの決算発表が行なわれる前日22日、米最大手キャリアのVerizon Wirelessの決算が発表されており、同社のiPhone販売(アクティベーション)台数から「Apple全体のiPhone販売台数が5000万台前後の水準」とアナリストらに事前予測されており、ほぼその水準に近いことが証明された。

 これだけを見れば誤差の範囲であり、株価にして10%以上下落するようなものではないと考えるが、筆者の予測では「Appleの将来の成長に関する不安が、今回の決算発表で現実のものになりつつある」と投資家らに見られたことが誘発売りの原因になったとみている。

 Appleの将来に関する懸念と業界のトレンドは、おおよそ下記のようなものとなる。

  • 先進国でのスマートフォン需要は飽和しつつあり、今後伸びを牽引するのは低所得層や新興国需要
  • iPhone 5の需要が当初想定ほどの伸びを見せず、部品メーカーへの発注が絞られている
  • 中国など新興国での売上の増加
  • iPad Retina ディスプレイモデル(第4世代iPad)とiPad miniの実際の需要が当初の想定とは異なり、iPad miniが非常に好調な一方で、フルサイズのiPadは比較的苦戦している

 Appleは2012年9月ごろの株価700ドルをピークに、現在は500ドル前後と3割以上株価が下落している。700ドルの株価は同社の驚異的な成長率と利益率を反映したものとみられるが、ここから一気に下がった理由はその成長に懸念が見られたことに由来する。

 だが、次のふたつの理由で、今後もAppleが以前のような驚異的な成長率や利益率を維持することは難しいと考えられ、ターニングポイントが到来している。

  • 先進国での需要が飽和したことで、一定の販売台数を維持することは可能でも、今後の大きな成長は望めない
  • 新興国での需要は伸びているが、こうした国でライバルと戦うための「手頃な価格の端末」をAppleは持っていない。低価格端末をリリースすれば戦うことは可能だが、従来の端末戦略は維持できず、低価格端末により売上や利益率悪化は避けられない。また低価格端末戦略を選ばなかったとしても、シェア拡大は望めないため成長余地は限られる

 つまり、どちらの道を選択してもAppleの業績が(主に利益面で)今後悪化していくのは避けられないとみられる。

 実際にその懸念があることは、決算からもうかがえる。ひとつは、売上の増加に対して純利益が伸びていない点で、販売コストが上昇している点だ。考えられる理由はいくつかあり、「iPhone 5の原価が従来モデルよりコスト高」「iPadなどでのラインナップ拡大と世代移行におけるコスト負担」などだ。

 ある程度は時間の経過とともに吸収できると思われるが、以前ほどの利益率達成は難しい可能性がある。iPhone 5の需要動向については、細かい機種ごとの内訳をAppleが発表していないため不明だが、Verizon Wirelessにおいて同四半期のiPhone販売台数中、半分がiPhone 5という話と、前述の中国などでの動向を考えれば、その比率はそこまで高くない可能性がある。マイナスではないものの、それほど大きなプラスでもないという水準だと筆者は予測する。

 iPadの動向については明らかで、フルサイズのiPadが本来取得すると予測されていたシェアは、iPad miniによって侵食されていると考えられる。iPad miniが好調で、Appleが急遽同端末の出荷台数を1200万台に拡大したというニュースが以前にあった。

 今回、同四半期のiPadの販売台数は2286万台で、1200万台より少ないとはしても、2286万台のうちの半分弱近くはiPad miniの販売台数だと筆者は予測している。昨年同期のiPad販売台数が1543万台であり、「iPad全体」の販売台数は50%以上増加しているが、実際にはその増加分がほとんどiPad miniによるものであり、さらにフルサイズiPad自体のシェアも侵食している可能性がある。

Appleがどのように振る舞うか注目

 過去最高の業績であることを考えれば、Apple製品の魅力自体が減ったわけではないと多くが認めるところだろう。一方その業績は、業界全体のトレンドの変化の中でターニングポイントを迎えつつある。

 その理由は、Apple自身も言及しているように「より手軽さに秀でたデバイスの人気」「成長ドライバーが先進国から新興国へシフト」というふたつにあり、今後1〜2年でAppleがどう振る舞うかによって業界地図が大きく変化するとみられる。まずは、夏頃をターゲットとした同社の次なるアナウンスに期待したいところだ。


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