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あれから2年――アメリカ電子書籍最前線

2013年01月12日 21時00分更新

文● 大原ケイ

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7.本の未来をパワフルに模索している業界人たち

 拙著で紹介したEブック専門出版社、Open Road(http://www.openroadmedia.com/)はその後も順調に成長し、今やEブックの出版社ではなく、“マルチメディアコンテンツ出版社”と名乗り、スティーブ・ジョブズを題材にした映画を製作するなどさらなる躍進中。リチャード・ナッシュは相変わらず世界中を飛び回っては、本の未来について語っているそうな。忙しすぎて最近はニューヨークでもめったに会わないぐらい。グランタ誌のジョン・フリーマンも莫言がノーベル文学賞を取る前にしっかりインタビューをしていて、感度は落ちていない模様。

8.アメリカ電子書籍の最前線では

 新たな問題も起きています。まずは、この2年でいちばん大きかったのが、アップルと5大出版社がエージェンシー・モデルによってEブックの値段を決めたのが談合に当たると米司法省に訴えられ、和解した事件。1社がまだ和解に応じていない状態で、この先2年は出版社側がEブックの値段を決めるのは禁じ手となる。だからといって、米Amazonも今さら営利度外視の破壊価格でシェアを伸ばそうとはしないだろうけれど。

 そしてISBN問題。Eブックには紙の本とは違う番号をつけるべき、というところまではコンセンサスができつつあるのだけれど、Eブックの場合、フォーマット別、バージョン別に違う番号を振るのか、振るとしたら誰が管理するのか、など全てが未解決で混沌としたカオスな状態。

 ほかにも、DRMは今後外していくべきなのか、図書館に卸すEブックは劣化しないがゆえ、適切な値段や同時ダウンロード数はどうするべきなのか、問題や課題が山積みなのは相変わらず。

9.電子書籍化は“出版文化を守る”ことにならないのか?

 この本ではあまり日本独特の問題には踏み込まないようにしたのだけれど、この2年で日本の出版業界から聞こえてくるのは、出版社が著者から「著作隣接権」なるものを引き渡すよう、政府のお墨付きをもらおうとしている問題。往生際が悪いなぁ、というのが素直な感想。この隣接権なるもの、要するに英語で言うところのsubsidiary rightsのことなのだろうけれど、これは本の企画が通る段階できちんと著者と出版社の間で、どの権利をどちらが引き受けて、どう活かしていくのか、最初から決めておけば済む話なのに。紙の本を出す過程で今までウヤムヤのなぁなぁでやってきたものが、書籍の電子化によってあらかじめキッチリさせなければならなくなっただけのことでしょ。

 これを機会に著者の方もあらためて「出版社から本を出す」ことにはどういう利点があって、どういう責任が伴うのか、理解しなければいけないだろうしね。出版社側にも、これからは「説明責任」の時代が来たのだと伝えたい。出版社がそれをできなければ、欧米風の文芸エージェンシーが必要とされていく、ということで。


 以上、引き続きアメリカのEブック最新事情についてはブログ(http://oharakay.com/)やTwitter(@Lingualina)で逐一アップデートを発信していく所存にて、よろしくお願いいたします。


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