低迷が続くNokiaから久々に良い知らせが届いた。12月5日にNokiaは、China Mobileと共同でWindows Phone 8スマートフォン「Lumia 920T」を中国市場で提供すると発表した。これを受け、Nokiaの株価は8%以上の上昇した。iPhone 5到来が待たれる中国スマートフォン市場で、Lumiaがどれほど受け入れられるのか。Nokia、それにWindows Phone 8の今後を占う上でも注目だ。
China Mobileとの契約を取り付けたNokia
一方でAppleの株価は下落
この日、Nokiaの株価は約8%上昇。対するAppleの株価は約6%下落した。Appleの下落幅はここ4年で最大となった。それはなぜだろうか?
まずはNokiaから見ていこう。China Mobileは中国最大、それはつまり世界最大のオペレーターだ。加入者は7億300万人。巨大市場の中国で50%以上のシェアを誇る。LumiaはそのChina Mobileのフラッグシップスマートフォンに選ばれたことになる。価格は4599元(約6万円)で、年内に販売を開始する。販売されるLumia 920Tは、同社が利用する3G規格である、TD-SCDMAに対応した機種である。
この発表によりAppleの株価が下がった理由は、AppleがChina Mobile向けにiPhoneを展開していないためだ。Appleは中国で2番手のChina Unicom、3番手のChina Telecomと組んでいる。China MobileはAppleではなくNokiaと手を組む。このことが両社の株価に影響したと言える。
同時に、Nokia/China Mobileのニュースは、Appleの端末ビジネスのある一面にもスポットを当てた。iPhoneを提供するために世界のオペレーター各社が負担する高額な販売奨励金だ。
実質価格で200ドル程度で加入者に提供するためには、オペレーターは1台あたり400~500ドルものを販売奨励金を負担しなければならない(iPhone 5登場時、Barclaysのアナリストは販売奨励金は1台400ドル程度と試算していた)。Appleは初代iPhoneを投入した2007年からChina Mobileと交渉を持っているようだが、条件を飲めないために決裂に終わっているようだ。なお、Androidスマートフォンの場合、販売奨励金は200~300ドル程度といわれている。
オペレーターの懐事情はそうでなくても厳しい。価格競争に加えて、データトラフィック増対策のための投資も強いられている。iPhoneを提供するオペレーターは、代償を払ってでも揃える魅力があると判断しての決断だろう。実際にChina UnicomはiPhone 5の予約開始初日で10万(3日で20万)もの予約を集めたというから、中国でのiPhone人気のほどがうかがえる。
Nokiaの話に戻ろう。かつてNokiaは中国では一大ブランドだったが、iPhone登場以降携帯電話市場の流れは変わっており、中国も決して例外ではない。Androidを担ぐ地元のZTE、Huawei Technologies、Lenovoらグローバル企業だけでなく、Xiaomi、Oppo、Coolpadなど新しいメーカーもAndroidを活用している。Nokiaのシェアは大きく縮小しており、Nokiaは新しいイメージを打ち出してこれらのメーカーと対抗しなければならない。
その点、China Mobileからのプッシュは期待できそうだ。同社は3Gで中国独自規格のTD-SCDMAを採用するが、グローバル標準のW-CDMAを採用するChina Unicom、China Telecomが3Gユーザーが全体に占める比率が30~40%に達しているのに対し、China Mobileは20%程度と2Gからの移行で遅れをとっている。3Gへのマイグレーションとスマートフォンのプッシュという点で、China MobileにとってもLumia 920Tは重要な存在となる。
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