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低価格な汎用品を用いたDIYな取り組み

畳部屋をリノベート!NTTコムウェアの排熱式データセンター

2012年12月10日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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従業員用の畳部屋を排熱式データセンターへ

 同社では2010年に外気冷却の導入を検討し、2011年に排熱式データセンター構築のプロジェクトをスタート。3・11の東日本大震災の影響でいったん伸びたものの、9月にはNTTコムウェアの設備内に排熱式データセンターが完成した。

排熱式データセンターの外気空調モデル

 外気冷却を前提にした排熱式データセンターの原理はシンプルだ。図の通り、ICT機器から発生する熱を排気ファンで排熱し、その気圧差で外気を取り入れる。気温の低くなる冬季は、ICT機器での排熱を吸気側に送り込んで混気させ、温度を維持するという空気循環になる。「冬の寒い時期はここの外気も-5℃になり、結露も起こる。静電気が発生する。そこで、ICT機器で暖まった空気を自分自身に戻すことで温度を維持する」(尾西氏)。これを実現すべく、吸気、排気、混気の量、風量の4つのポイントを見える化し、ダンパーやファンの回転数を自動制御する。ここが排熱式データセンターのもっともキモになる部分だ。

 ラックあたりの電力供給は実効8kVAで、12kVAの高密度実装にも対応。データセンターモジュールあたりの消費電力は200kWクラスになるという。「200kWクラスを冷やそうとすると、当社がこれまで使ってきた空調機がN+1台構成で6台必要になるので、フロア面積のうち半分が空調機で埋まってしまうことになる。この場合、300サーバー程度が1つの目安だが、今回の排熱式データセンターであれば約3倍の1000台近く搭載できる」(尾西氏)とのことで集積度は大幅に高められている。

 今回の排熱式データセンターが作られた区画は、もともと従業員が休憩等で使っていた畳部屋。この区間をリノベーションすることで、最大28ラック並べられるデータセンターとして改良した。写真で掲出できるのは一部になるが、実際の排熱式データセンターを見ていこう。

排熱式データセンターの概観

ビルの外側。左から導入口、外気センサー、そして排出口となっている

暖かい空気を閉じこめるホットアイルにキャッピングを施している

ICT機器の吸気側にあたる防塵フィルター

排気ファンを介して、ICT機器の排熱を外部に排出

 特徴的なのは、暖めた空気を効率よく排気すべく、暖気を閉じこめるキャッピングを盛り込んだ点だ。ICT機器を冷却するためのコールドアイルをキャッピングする既存の省エネデータセンターと逆の発想だ。さらに、冬場は乾燥しやすくなるので、ICT機器の大敵である静電気と結露にも配慮が必要だ。「排熱式データセンターは加湿した空気もすべて排気しているので、通常のデータセンターより加湿能力が必要になる」(尾西氏)とのことで、吸気側に気化式の加湿器を用意している。湿気を含んだタオルを重ね、最適な加湿能力を割り出したようだ。

 また、今回の排熱式データセンターでは、冷却方法だけではなく、データセンターで利用する設備も見直した。たとえばUPSも電力室単位で巨大なものを導入するのではなく、ラックマウント型の低価格なUPSを用意。耐震性に関しても、二重床ではなく、ラックを滑らせることで横揺れを吸収する免震床を採用した。さらにサーバーに関しても、集中電源を用いたDC12Vの直流給電を採用し、変換ロスを削減。こうしたさまざまな施策を積み重ねることで、省エネだけではなく、コスト削減や即納性を実現したという。

(次ページ、省エネ効果は年間でPUE1.02キープ
インフラコストは45%削減!)


 

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