他方で、Duo 11のような構造にすることで、ディスプレーの角度は変更できないものになった。また、11.6型で1920×1080ドットという、高解像度な液晶パネルを採用したことで、液晶ディスプレー面をアンチグレア化すると精細度が落ちやすくなるため、あえて光沢加工となっている。
鈴木(一)「ディスプレーの角度が固定されているという点は、もちろん議論したポイントです。しかし『タッチしても液晶が動かない』と言う点を重視しました。それは議論の上で『捨てた』わけです。IPS液晶パネルを使うことで視野角の問題が生じにくい点であるとか、そうしたある程度の裏付けがあって、決めました」
金森「ディスプレーは光沢加工としました。液晶ディスプレーの美しさとアンチグレア、それぞれ相反する部分があります。そこでPCとしての体験をしっかり担保するために、液晶ディスプレーの仕様は『フルHD・光沢・11.6型』に定めました。その代わり、オプションで液晶保護フィルムを用意しました。それをつければ反射は抑えられますので、好みにあわせてつけていただければと思います」
Duo 11にとって重要なのは、「ペンの書き心地」である。Windows 8登場と同時に、各社からさまざまな形状のタッチ対応PCが出てくるが、その多くはディスプレー面に静電容量式のタッチセンサーを搭載するのみ。ペンを使う場合には、iPadなどでもおなじみとなっている、伝導体をつけたペンを使うことになる。
だがそうしたペンでは細い文字は書きづらいし、筆圧検知にも対応できない。画面に手をついて、紙のように自然に書くのも難しい。そのためDuo 11では、デジタイザペンを採用している。ディスプレー解像度の高さも、細かい線を描く上ではプラスに働く。
金森「ペンを持ちながらなにかを考えるとか、頭が整理されるとか、そういうことはありますよね。『そういう価値をパソコンに乗せたい』と考えました。おっしゃるように、静電容量式で使えるペンもあるのですが、ペン先が太くなってしまうんですよね」
デジタイザペンを採用したことは、ソフトウエア面でも特徴を生み出す。Windows 8上での動作でも、ペンと指の操作感は明確に分けて実装されているし、添付アプリでも一工夫している。
Duo 11の発売日以降にダウンロード提供される予定の「Note Anytime for VAIO」は、MetaMoji社の同名アプリのWindows Storeアプリ版である。Duo 11以外にも提供はされるのだが、Duo 11では「電磁誘導式ペンがある」ということを前提にカスタマイズされている。その点を、ソリューションプロジェクトリーダーの藤井康隆氏は次のように説明する。
藤井「『Note Anytime for VAIO』では、スクロールなどは指を、書く作業にはペンを使うようカスタマイズされています。ごく普通に実装すると、Windows上での操作の多くは、ペンも指も同じようになってしまいます。でもそれではペンの魅力が半減してしまう。マウスのイベントの中でペンと指の動作を分けることで、操作感をより向上させられるよう工夫しています」
Duo 11プロジェクトリーダーの鈴木陽輔氏は、オプションの保護フィルムも、ペンでの書き心地を考えて検討されているものであるという。
鈴木(陽)「フィルムを貼った状態では、ペンの滑り具合が変わります。こちらの方が書き味はよくなるでしょう。ペン先には堅い『黒』と柔らかめの『グレー』を用意してあるので、好みに合わせて使い分けてください。フィルムを貼った場合には、『黒の方がいい』という声が多いようです」
なお、Duo 11のペンは電池を使わないものではなく、単6電池を入れて使うものだ。この種のタッチ+ペンの技術としてはワコムのものが有名で、ワコムのものは電池を使わない利点がある。しかしDuo 11では違う技術が採用されている。
鈴木(陽)「ワコムの技術は、ペンをつけたモデルとつけないモデルの両方を用意する時には、さまざまな面で良いのですが、今回のようにすべてのモデルにつけてしまう場合には、こちらの方が適切と判断しました」
鈴木(一)「問題なのは厚みです。Duo 11で採用した技術の場合、ペンに電池が必要ですが、ディスプレー部を薄くできます。他の技術では、18mmを軽く超えてしまいます。そうするとUltrabookの条件を満たせなくなってしまうのです」(編注:Ultrabookでもタッチ対応の場合、厚みは+2mmまで許容されている)
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