CommunicationsはVoIPソフトで利用する音声ストリームだが、他のストリームと違い、遅延を最小にする「低遅延オーディオモード」が使われる。低遅延オーディオモードは、音声処理にかかる時間が最短になるように動作するモードで、自分の声が相手にネットワークなどに送出されるまでの時間や、音声パケットを受信してから実際に再生が始まるまでの時間を最短にする。
デジタル電話の規格である「TIA/EIA 920」では、「リアルタイムコミュニケーションのためには、遅延は100ミリ秒以下であることが望ましい」とされている。Winodws 8ではこれを目標として、低遅延オーディオモードが開発された。低遅延オーディオモードを「折り返し」再生でテストすると、マイクから取り込まれた音声が再生されるまでの遅延は、65ミリ秒に短縮されていたという。
ただし、低遅延オーディオモードはCPUパワーが必要になるので、バッテリー駆動時間や処理負荷には影響が出てしまう。そのため、これ以外のストリームタイプでは、低遅延オーディオモードは使われない。
バックグラウンドで再生可能なタイプのサウンド再生は、「メディアトランスポートコントロール」が利用できるようになる。これは、バックグラウンドでも鳴り続ける「BackGroundCapableMedia」タイプのサウンドを扱うミュージックプレーヤー(例えば標準の「ミュージック」)から利用できる機能だ。再生中にパソコンにあるボリュームボタンを押すと、再生制御のためのボタンと再生中のストリームに関する情報(例えばジャケット写真)を表示する。タブレット版のWindows 8では、ボリュームボタンを装備することが必須となっているため、どのタブレットでも利用できる機能だ。
ストリームタイプの恩恵を受けられるのは
Windows 8スタイルのアプリだけ?
Windows 8スタイル(旧称Metroスタイル)のアプリケーションでは、自分の再生しているサウンドストリームの音量状態に対して、通知を受信できるようになった。Windows 7までは通信用ストリームによる音量の変化はあったが、それ以外は並列に再生されていたため、アプリケーションは自身のサウンドストリームがどのような状態にあるのかを、知る必要はなかったのである。
通知される状態は「Full」「Mute」「Low」の3種類。Fullはアプリケーションが出力中のサウンドストリームがユーザーに聞こえる(はずの)状態にあることを示す。Muteはユーザーに聞こえていないことを示す。先の例なら、別の音楽の再生が始まったり、アプリケーションがバックグラウンドになって再生が止まった場合などだ。Lowは別のコミュニケーションストリームが開始されたために、自動的に音量が下げられたことを意味する。Windows 8スタイルのアプリケーションは、こうした3つの状態を受け取ることができ、MuteやLowを受け取った場合には、再生を継続するのか、停止するのかなどを判断できる。
残念なことに、このストリームタイプによるサウンドの扱いは、Windows 8スタイルのアプリケーションでのみ有効で、デスクトップ側のメディアプレーヤーなどは、従来と同じままだ。理由のひとつには、互換性の問題もあるという。デスクトップアプリケーションは、基本的にフォアグラウンド/バックグラウンドに関係なく、音楽やビデオの再生を続けるし、その間サウンドは出力されたままになる。また、VoIPで音声が使われる場合の処理も同一で、コントロールパネルの「サウンド」の「通信」タブなどもWindows 7と同じままである。
Windows 8では、MP3ファイルの再生にWindows Media Playerも使えるが、Windows 8スタイルアプリケーションの「ミュージック」も利用できる。両者で同じフォルダを「ライブラリ」として利用できるだけでなく、プレイリストファイルなども共有できる。ストリームタイプによる制御も考えると、音楽再生ならWindows Media Playerよりも「ミュージック」を使った方がいいだろう。Windows 8スタイル対応の音楽再生アプリケーションが充実してくれることを望みたい。
ちなみに、「ミュージック」は最初にストア関連の情報が表示されるので、「うざったい」感じがある。これは設定チャームにある「お好み設定」で、「スタートアップ表示」をオンに設定することで変更でき、起動時に直接自分の音楽ライブラリを開けるようになる。
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