今回の題材はソニーの「Xperia Tablet S」だ。これまでは「Sony Tablet」と呼ばれていたブランドが名称を変更し、スマートフォンと同一のブランド名で再出発することになった。
今回このタイミングで登場したのは、9.4型ディスプレーを採用する「S」シリーズの方。ブランドだけでなく、SoCを含めたハードウエアもかなり変更が加えられている。Xperia Tablet Sは、iPadを追いかけられる「ソニーらしいタブレット」になったのだろうか? 製品の発売は9月15日の予定なので、ここでは試作機から探ってみよう。
ボディースリム化で実用性は向上
コネクターは「独自」の新規格
Xperia Tablet Sの話をする前に、前モデルであるSony Tabletのことをおさらいしておきたい。Sony TabletはiPadの登場以降、急速な伸びが期待されたタブレット市場に、ソニーが本格的に参入していくための武器として投入したものだ。
だが残念ながら、その売れ行きは芳しくなかった。片手で持った時に軽く感じるようにする「偏重心デザイン」、ソニーのAV家電と連携する各種アプリケーションの準備など、他社のタブレットにはない要素もあり、見るべきところはあった。しかし、それらの要素がきちんと商品にとってプラスの要素になっていたわけではなかった。偏重心であることは厚みの増加につながって鞄の中での収まりを悪くし、ソニー製家電との連携は、対象製品の少なさや動作のぎこちなさが問題となって、価値にはならなかった。
なにより、ソニーが期待した「動画との連携」という意味では、Sony Tabletの採用したNVIDIAのSoC「Tegra 2」の性能、特に動画再生能力が不足していたのが厳しかった。単にウェブを見るくらいなら十分な性能だったと思うが、大量の写真をサクサクと扱ったり、動画を見たりするには、Tegra 2は適していなかった。Tegra 2の性能が想定より低かったため、と言える。
Xperia Tablet Sでは、そういった問題点の多くが改善されている。別の言い方をすれば、タブレットとしてどこかあか抜けず、収まりの悪い部分が多かったものが、かなり洗練されたものになった。
まずはデザインだ。片方を折り曲げた雑誌のようなデザインモチーフは健在だし、若干そちら側に重心が寄っている偏重心デザインも健在だが、Sony Tablet Sのように極端なものではなくなり、シンプルな「薄型」に近くなった。ボディー素材はプラスチックからアルミに代わり、高級感が増している。要は「前の印象を残したまま普通になった」わけだ。
筆者は旧機種の「くさび形」が決して嫌いではなかったので、「ちょっと当たり前になりすぎたかな」という印象もある。だが、多くの人がタブレットに求めるのは「薄さ」だろうから、これで問題ない。結果、重さは約570g、厚さは8.8mmと、従来モデル(重さ約598g、厚さ10.1~20.6mm)よりも改善されている。
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