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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第159回

スマホを制してWindows 8にも ARMプロセッサーの最新事情

2012年07月09日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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急激に普及拡大するARMプロセッサー

 2010年末~2011年にかけての連載82回から85回で、ARMプロセッサーコアとそれを採用するSoCについて解説した。それから1年半ほど経過した現在では、市場にARMベースのSoCを搭載したスマートフォンやタブレットがさらに多く出回るようになった。そのうえマイクロソフトまでが、「Windows RT」という名でほぼフル機能のWindowsをリリースするといった状況にあり、以前に比べるとARMプロセッサーは、はるかに身近な存在となっている。

 一方ARMの側から見ると、今はどのような状況なのだろうか。ARMは2005年に初めて「Cortex-A8」を発表してから、実際に採用した製品が登場するまで、4年ほどを要していた。明確に普及したと言える状況になったのは、2010年に入ったあたりだ。つまり、コアの発表から製品の普及まで、従来は5年を要していた。

 ところが後継の「Cortex-A9」になると、2007年に発表されたものが2011年にはほぼ普及したという状況になっており、1年分短縮されている。後継の「Cortex-A15」ともなると発表は2010年だが、2011年末にはサムスン電子がこれを搭載した「Exynos 5250」のサンプル出荷を発表するといった具合である。搭載製品は2013年あたりに普及している可能性が非常に高い。

 このように、コアの発表から製品投入までの時間が急速に短くなっているのが、昨今のARMプロセッサーコアの特徴であり、この状況に合わせてCortex-Aシリーズのラインナップも急速に拡大しつつある。さらに、マイクロコントローラーの「Cortex-M」系を充実させるとともに、リアルタイムコントローラーの「Cortex-R」系のラインナップも拡充するという、全ラインナップで急速な攻勢をかけているのが、ここ数年のARMというわけだ。今回はCortex-Aシリーズに絞り、ARMプロセッサーのラインナップについて説明しよう。

初のスーパースカラー実装
Cortex-A8

Cortex-A8以降のARMアーキテクチャーロードマップ

 2005年に発表された、ARM初のスーパースカラー(SuperScalar)を実装したアーキテクチャーが、Cortex-A8である。

Cortex-A8の内部パイプライン。実行ユニットは4つ

 Cortex-A8はまだインオーダーの構成で、SIMDエンジンの「NEON」はオプション扱いだったので、簡単に切り離せるように配慮されていた。Cortex-A8が発表されたのは半導体関連イベント「Fall Processor Forum 2005」の場で、当時は「90nmプロセスを使って1GHz程度の動作周波数で、300mW程度の消費電力」というのを設計目標としていた。

 翌2006年5月に開催された「Spring Processor Forum 2006」では、テキサス・インスツルメンツ(以下TI)が65nm LPプロセスを使って、Cortex-A8を実装したと報告している。ただ2006年頃には、すでに次の45nmプロセスがほぼ見えており、またARMもこの当時すでに、最も関係の深いパートナー企業(1st Tier)に対してCortex-A9を説明していたためか、Cortex-A8を45nmで実装したベンダーはそれほど多くない。

 とはいえ、Cortex-A8は回路規模の割に性能がいいという利点があり、最近では5ドル程度の低価格アプリケーションプロセッサーに使われるケースもあるので、寿命が尽きたわけではない。しかしARM自身が積極的に、Cortex-A8をCortex-A5/7/9で置き換えつつあるため、一時期に比べると製品を見かけることは少なくなっている。

Cortex-A8ベースの端末は、中国ではまだ多数が販売されており、秋葉原でも輸入品を見かける。写真の製品は手の平より小さなAndroidマシン

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