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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第159回

スマホを制してWindows 8にも ARMプロセッサーの最新事情

2012年07月09日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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ヒット作A8の後継
Cortex-A7

 「Cortex-A7」は2011年10月に投入された最新のプロセッサーだ。ARMの命名規則によれば、Cortex-A7はCortex-A8よりやや低い性能になるはずだが、実際はCortex-A8と比較して、20%程度高い性能を目指している。内部構造はCortex-A9をインオーダーにしたというか、Cortex-A8をもう一度作り直したというもので、Cortex-A9よりはやや性能が落ちる程度のポジションにある。

Cortex-A7の特徴。FPU/NEONやMACユニットも完全にパイプラインへと統合された

 Cortex-A7の目的はCortex-A8の代替であり、28nm以下のプロセスでの利用を考慮している。Cortex-A9は28nmプロセスまで使われるが、20nm世代で使われるかどうかは微妙なところだし、Cortex-A15で追加したさまざまな拡張に対応していない。そのためARMとしては、20nm世代までCortex-A9を引っ張りたくはないのだが、そうするとCortex-A5とCortex-A15で性能ギャップが大きくなりすぎる。この間を埋めるのがCortex-A7というわけだ。

 ARMの説明によれば、Cortex-A7は「100ドルのスマートフォンを実現するためのプロセッサー」という位置づけであるという。性能レベルは現在のCortex-A8/A9程度にとどめて、その代わり低コストや低消費電力性を追求したモデルということになっている。

 このCortex-A7と一緒に発表されたのが「big.LITTLE」という技術である。スライドは2コアの例だが、OSからではこの4つのCPUが、見かけ上2つに見えるというものだ。ハイパースレッディング・テクノロジーの逆バージョン、とでも考えればいいだろう。

「big.LITTLE」の構成図。2種類のプロセッサードメインを用意して、負荷が低い時はCortex-A7ドメイン、負荷が高い時はCortex-A15ドメインが動いて処理する仕組み

 big.LITTLEを実現するためには、Cortex-A15と対になる省電力プロセッサーが、Cortex-A15とまったく同じ機能を持っている必要がある。CPUを切り替えた途端にアプリケーションが動かなくなる可能性があるからだ。そのためにも、Cortex-A8やCortex-A9では都合が悪いという事情もある。

 ロードマップ図にあるとおり、ARMは大体毎年10月前後に新コアを投入する傾向がある。おそらく2012年も、10月30日から開催予定の開発者向けイベント「ARM TechCon 2012」の会場で、何かしらの発表があると思われる。

 筆者の予想では、そろそろARM V8アーキテクチャーの新コアの発表がありそうなので、既存のARM V7アーキテクチャーベースの追加製品は、そろそろ打ち止めではないかと思う。だが蓋を開けてみないとわからない。現状のCortex-A5/A7/A9/A15というラインナップで、28nm~20nmプロセスの世代はカバーできると思われるので、「Cortex-A11」や「Cortex-A13」なんてものが出てくる可能性は、低いだろうと予想している。

 次週はCortex-R系とCortex-M系について説明しよう。

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