サーバーも視野に入れたハイエンド
Cortex-A15
28nmプロセスの目処が立った2010年9月に、Cortex-A15コアが発表された。こちらは15段の長大なパイプラインと3命令同時デコード、という強力なプロセッサーである。
実は現時点でも、ARMはCortex-A15の性能を明確に示していない。シングルコアでの性能は、45nmプロセスで製造されたCortex-A8と比較して2.5~7倍以上高速としている。もっとも、「動作周波数が同一」とはどこにも書いていないので、DMIPS/MHzで比較してどの程度かは不明だ。パイプラインの構造を考えれば、3.0 DMIPS/MHz程度は狙えるところだろう。
もっとも、Cortex-A15は性能もさることながら、次世代の「ARM V8」アーキテクチャーへの橋渡し、という側面も大きい。Cortex-A15は「ARM V7-A」アーキテクチャーなので、仮想メモリーアドレスはまだ32bitのままであるが、LPA(Large Physical Addressing)という技術を搭載して、物理メモリーアドレスは40bit(1TB)までサポートする。また、仮想化のためのハードウェアを搭載するのもCortex-A15が初めてで、4コアを超える複数コアを集約したシステムを可能にしたのも、Cortex-A15が初となる。
ただし4コアを超える構成は、ARMが提供する「CoreLink CCI-400」というインターコネクト技術と併用することで可能になるので、厳密にはCortex-A15の機能ではない。こうした拡張は、携帯電話やタブレットには当面不要なもので、これを利用するターゲットは、Cortex-A15を利用したサーバーである。もちろん、こうした機構を搭載したからといって、すぐさまサーバーに採用されるというわけはなく、当面はいくつかのメーカーが試作する程度の話でしかない。
しかし長期的には、ARM V8以降のアーキテクチャーで64bitメモリーアドレスに移行して、ローエンドサーバーやHPC用コントローラーなどへの採用を狙うことを、ARM自身が明確にしている。そのためには、ソフトウェアを含むプラットフォームが必要であり、こうしたプラットフォーム作りの一環として、Cortex-A15はサーバー関連機能を装備すると考えればいいだろう。
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