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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第158回

GPU黒歴史 Intel Larrabeeほかマイナー系GPUを総ざらえ

2012年07月02日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 GPU黒歴史も、そろそろネタが尽きてきた。ということで、CPU黒歴史の最終回と同じように、細かい製品をいくつかまとめてご紹介したい。

名機の後継者は性能上がらず
Weitek P9100

 Weitekという会社は、元々は「非」互換FPUを製造するという、ちょっと面白いメーカーだった。設立は1981年のことで、インテルを退社したエンジニアたちが集まった会社だ。

 Weitekが最初に作った製品は「Weitek 2167/3167/4167」である。名前から想像できるように286/386/486向けのFPUであるが、インテルのFPUである287/387/487とは互換性がないので、インテルも特許侵害で訴えようがないものだった。パッケージも独自なら、命令セットも独自。CPUから見ると、あるI/Oポートアドレスにコマンドを送ると、結果が別のI/Oポートアドレスに返ってくるという、コプロセッサーと言うよりも、今風に言えばアクセラレーターである。

 このWeitekのFPUは、インテルのFPUに比べてとても速いうえに、機能が豊富な点が売りであった。1980年代前半のマザーボードには、しばしばWeitekのFPU用ソケットを搭載したものも珍しくなかった(筆者も1枚持っていたが、型番とかは忘れてしまった)。

 そうは言っても、こうしたインテル非互換品で長期的に商売をするのはなかなか難しい。そこでWeitekはMIPS CPU向けのFPUを出したが、こちらも大きな商売にはならなかった。だが「高速な数値演算処理に長けた会社」、という評判が確立したことで、WeitekはHPと共同で「PA-RISC」の開発なども手がけることになり、そのあとはSPARCの互換CPUの製造に携わる。しかし、ワークステーション市場の成長があまり見込めなくなったことで、次に同社が参入した市場がグラフィックだった。

 最初の製品である「Power 9000」(P9000)は1992年に発表され、そのグラフィック性能の高さによって、瞬く間に普及することになる。このP9000はRAMDACはおろか、VGAも内蔵しない純粋なグラフィックアクセラレーターであった。そのため、同じWeitekの「W5186」や、OAK Technologyの「OTI087X」などといったVGAチップと組み合わせてカードに搭載する必要があり、P9000搭載カードのサイズはかなり大きく、価格も高めだった。

 ちなみにW5186は同社の自社開発製品でなく、どこかのメーカーからのOEMを受けたものだったようだが、すでに詳細は不明である。ことVGA環境に関しては、W5186、OTI087Xともに「とりあえず動く」程度で、Windows環境にしないとその効力は発揮できなかったが、その分Windowsではきわめて快適ということで爆発的に売れた。日本でも、日本IBMの「PS/V」がWeitekのグラフィックスカードを搭載して、NECの「PC-9821」シリーズと真っ向勝負を掛けた広告を打ったことを、覚えている方もいらっしゃるだろう。

 P9000はISAバスとVL-Busのみの対応であったが、翌1993年にはPCIに対応した「P9001」をリリースする。P9001はPCIへの対応だけが唯一の違いであり、性能的にはP9000と変わらなかった。だがこの頃になると次第に、競合メーカーも性能を引き上げてくる。P9000シリーズの最終製品は「P9001+E5186」で、これにRAMDACまでを1チップ化したのがP9100だった。しかし性能的にはほとんど改善がなく、この頃にはすでに最高速チップの座から滑り落ちていた。

 Weitekはここで、Powerシリーズを性能改善するのではなくハイエンド市場をすっぱり諦め、ビデオメモリーにUMA方式を採用した低価格向けの「W464」(i486用)と「W564」(Pentium向け)を開発する。ところが、これらが完成した直後にRockwell Semiconductor(現在のConexant Systems)の「Brooktree」部門に買収されて終わることになる。P9000のカードはしばしばBrooktreeの「Bt485/489」といったRAMDACと組み合わせて利用されており、そのBrooktree部門に買収された、というのも何か不思議な感じではある。

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