Connected Standbyで
Windowsタブレットの使い勝手を変える
ソフトウェアの開発では、開発者がWindows 8で開発向けにソフトウェアを開発する3つのメリットが示された。ひとつは「World-wide reach」、つまりWindowsは世界中で使われており、アプリを世界に向けて販売することが可能で、その潜在顧客の数はほかのプラットフォームよりも大きいという点だ。もうひとつは「Powerful tools」。Visual Studioを始めとする開発ツールがそろっており、Visual Studio Expressなら無料で利用できるということだ。
最後は「Rich platform」で、WinRTによりWindowsが持つ機能や、さまざまなデバイスを利用可能という点だ。従来のWin32 APIに比べて、目的に合わせた強力な機能が用意されていることや、SkyDriveなどのクラウドストレージ、メッセンジャーやHotmailといったコミュニケーションツールといった「クラウド」機能だけでなく、ローカルリソースにもアクセスもできるという点である。
だが逆に言えば、Windows 8のメリットはそこにしかない。タブレットではほかのプラットフォームが先行していて、多くの開発者が多数のアプリを作っている。すでにiPadは3世代目だし、Androidタブレットも3.xから4.1までバージョンアップしている。PCプラットフォームはこれまでのWindowsを継承しているので、「成熟度」という点では十分だが、タブレット市場での可能性はまだ未知数である。
「Inside Windows 8」というセッションは報道陣向けであったためか、内部に関する細かい話は出なかった。デモとして、Windows RTでの「Connected Standby」や、メモリー使用量を見せた程度だ。
Connected Standbyのデモは、システムの消費電力をリアルタイムに表示するツールを使ってスタンバイ中の消費電力を見せた。ときどき消費電力が上がるので、通信を確認しているのがわかる。その状態で、ネットワーク経由でデモ機に対してメッセージを送ると、これを受信したシステムがスタンバイ状態から復帰して、消費電力が上がっていく。
これまでのWindowsはスリープ中なにもできず、リアルタイム性の高いコミュニケーションを行なうには、電源をオンにしたままにしなければならない。それとConnected Standbyは、大きく使い勝手が違ってくる。なお、Windows RTは電源がオフになることはなく、スタンバイ状態か、通常動作状態のどちらかになるそうだ。
良質なユーザー体験を維持するための
テストツールも用意
また、ハードウェア開発用のツールである「Windows Assessment Console」のデモも披露された。これは、バッテリー消費や起動時間、レジュームにかかった時間などのテストを行なうツールだ。これを使うことで、Windows 8を搭載したハードウェアの性能が、ユーザー体験を悪くしないためのさまざまな要求値を満たしているかどうかがわかる。これを使うことで、ハードウェアメーカーは正しいテストを行ない、システム性能がマイクロソフトの要求を満たしているかどうかを確認できる。またテスト中の動作も記録し、どのような原因で性能を満たせなかったのかなどを究明することも可能なようだ。
Windows 8では、ハードウェアやWindows 8の構成などにより、ユーザー体験が悪化しないようにと、さまざまな要求条件を定めている。これはWindows 8が、ほかのタブレットプラットフォームと競合するためには必要なものだ。iOSはアップルのハードウェアしかなく、タブレットにいたっては3種類しかない。そのためユーザー体験を保つことは簡単だ。だがWindowsの場合、多数のメーカーが関わって製品を作ることになるため、条件を詳細に決めない限り、ユーザーがWindows 8を使ったときの体験の質を一定以上にできない。
その反省に立ったWindows 8では、これまで以上にシステムに対する要求が多い。しかし単純に条件を文書で示すだけでは、質を保つことはできない。そのためマイクロソフトとしても、テスト用ツールを開発してテストを行なわせ、要求条件を満たしていることをメーカーが簡単に確認できるようにしているわけだ。おそらく、Windows 8のプレインストールライセンス条件として、こうしたテスト結果が要求されるのだと思われる。
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