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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第155回

GPU黒歴史 失敗したMatroxの反撃 Parheliaは今も生きる

2012年06月11日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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微妙な性能と高価格で沈没
ビジネス市場にシフトして生き残りを計る

「Parhelia-512」の評価用カード

 いよいよ本題のParheliaである。正式には「Parhelia-512」となるこのGPUは、2002年5月に突如発表された。Parhelia-512はDirectX 9.0のリリース前に、その機能を一部先取りする形で実装していた。具体的に言えば、DirectX 9.0は本来Vertex ShaderとPixel Shaderが両方Version 2.0でなければいけないのだが、Parhelia-512はVertex ShaderこそVersion 2.0ながら、Pixel ShaderはVersion 1.3に留まっていた。

 とはいえ、ピクセルパイプラインやVertex Shaderは4基、メモリーバス幅は256bitと、同時期の競合製品である「GeForce 4 Ti」や「RADEON 8000」シリーズを凌ぐ構成で、DirectX 8.1世代のグラフィックスカードとしても比較的ハイエンドに分類される製品となった。さらに3画面同時出力を可能とする「Triple Head」構成や10bitカラー(RGB各10bit)サポート、「16x Fragment Antialiasing」「Glyph Antialiasing」(フォントのアンチエイリアシング機能)など、多画面・高画質化に向けた機能は競合製品に比べて大幅に充実していた。

 これでParheliaの性能が良ければ問題はなかったのだろうが、動作周波数が200MHzと競合製品よりやや遅めなうえ、結果としてPixel Shaderの性能で見劣りした関係で、性能の方は今一歩だった。とはいえ、Parheliaファミリーの最初の製品としてはそう悪くない性能であり、これに続く製品が欠点をカバーしていけば、また違った展開もあっただろう。真の問題は、これに続く製品が欠点をカバーしなかったことだ。

 ParheliaはUMCの150nmプロセスで製造されたが、8000万トランジスターを集約したダイサイズは200mm2を超えるもので、当時としてはかなり大きなものだった。おまけにメモリーバスも256bit幅となった関係で、メモリーチップが8個の構成になり、これにともない基板面積も大きくなるといった具合に、完全にハイエンドスペックの構成だったから価格も高かった。それでいてゲーム性能は「そこそこ」といった程度だから、当然売れ行きも悪い。

Millennium P650

 そこで、内部の描画エンジンを半減させた低価格版を「Parhelia-LX」として2003年に登場させ、これを搭載した「Millennium P750」と「Millennium P650」をリリースする。両者の違いは、Triple Head対応(P750)かDual Head対応(P650)かで、性能的には何しろParhelia-512の半分だから、いいわけがない。結局、3D性能は「あればいい」程度で、むしろ2画面/3画面出力が欲しい、といったややプロ向けの利用に限られることになった。

 一方Parhelia-512の方はというと、2002年には同じUMCの150nmプロセスを使いながら、DirectX 9にフル対応した「RADEON 9700 Pro」をATIが投入したものだから、ますますもって存在価値が薄れることになった。この当時、NVIDIAはヘアドライヤー投入で躓いていたから、もしMatroxがParhelia-512を完全DirectX 9対応にしたり、動作周波数を引き上げるといった方策をとっていれば、ひょっとするとまだ目があったかもしれない。だが、残念ながらそうした対策は皆無で、むしろ4画面出力対応といった業務向けの派生型製品を作るほうに忙しかったようだ。その後も、例えばAGPをPCI Expressに切り替えた派生型が忘れた頃に登場するという感じで、製品投入こそ続いたが、大きな変更はないままだった。

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