製造プロセスの簡略化とタッチパネルへの応用
2つめには既存の液晶パネルの生産ラインを生かしながら、さらに、アモルファスシリコンよりもプロセスを簡略化できるという点だ。
現在、IGZOの生産は、かつて大型液晶パネルを生産していた三重県亀山市の亀山第2工場のラインを改良し、中小型液晶パネル生産ラインへと移行。3月からこの生産ラインでIGZOを生産している。
「従来のIGZOラインから移行するための設備投資はそれほどかからない。歩どまりの点でも問題はなく、すぐに新技術での生産へと移行が可能になる」という。
水嶋副社長は、「年度内にはすべての生産を新たなIGZOにしたいと考えいるが、これがどの程度移行できるのかというのは、すでに従来型IGZOを納めているお客様の要求次第。新たなIGZOにしたいという要望があれば、すぐに移行したい」と語る。
そして、3つめには、モバイル液晶以外のディスプレイデバイスへの応用展開が可能である点だ。
「大型テレビ向けには、IGZOの技術が差別化策のひとつになるかが疑問。4Kテレビについても、技術的には実現が可能だが、製品化する意味があるのとかという別の問題がある」(水嶋副社長)として、テレビ向けに利用する意思はあまりないようだが、高精細ノートPCでは、Ultrabookへの搭載のほか、CADなどの高精細画質が求められる用途。さらにはタッチ利用が想定されるデジタルサイネージや卓上型ディスプレーなどでの応用も考えている。
「有機ELディスプレイは選択肢の一つ」と水嶋副社長
その一方で、有機ELディスプレイへの応用には踏み出す姿勢をみせる。
「市場から要求されている要素は、高精細度と低消費電力、そしてコストである。これらの要件を満たすのが、液晶なのか有機ELかという点では、いまはまだ液晶が優位である。だが、シャープの有機ELの開発は、他社には遅れていない水準にある。市場動向を見て、有機ELをモバイルディスプレイのバリエーションのひとつとして揃えていくことになる」とする。
シャープの水嶋副社長は、「IGZOを量産しているのは、世界で唯一シャープだけ。IGZO技術をもつものだけがモバイル液晶の大きな成長の成果を享受できる」(水嶋副社長)と自信をみせる。

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