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「穴埋め式」で説くソーシャルメディア活用術 (2/2)

2012年03月27日 10時00分更新

文●小池 勉/コンテンツブレイン

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「ユーザーの反応による情報の再構築」でWebコンテンツを支援

 企業がある新製品の情報をFacebookに流し、情報を見たあるユーザーが「いいね!」をクリックしてコメントを書くとします。すると、そのユーザーとつながった別のユーザーの間にも「あの人がいいね!と思っている商品だ」と広がっていきます。

 ここには2つの意味があります。ひとつはユーザーが自分の意見を加えること。ただ情報が複製されるのとは違い、ユーザーによって自分の意見、考えが追加されて醸成されながら広がっていきます。

 もうひとつは、ユーザーの共感が含まれること。SNSは基本的に、自分が信頼している誰かの発言を読むことになります。つまり、発言を読む時点で、ユーザーはその発言の主に心を開いていることになるのです。

 そのうえで「いいね」と評価してくれます。さらにその人につながっている人は、「あの人が評価しているのだから」と、ここでも心を開いた状態で情報を取り込んでくれます。

 私は、このような「ユーザー自身が情報を付加して熟成すること」「共感を伴って情報が拡散すること」を、「ユーザーによる情報の再構築」と捉えて、SNSの最大の特徴だと見ています。

 個人のフィルターを通しての情報再構築とは、今まで「一方通行だった企業の情報」が「さまざまな人の意見と相まって話題にされながら伝わる情報」になることです。それは、企業にとって今までにない大きなメリットだと思います。またクチコミと違い、拡散した情報でも本来伝えたいことは正確に伝わります。

SNSは企業とユーザーをつなぐ新しいコンタクトポイント

 最後に、企業がSNSを利用する目的を考えてみましょう。私は、企業にとってSNS導入の一番の目的は、「ユーザーとの新しいコンタクトポイントを作る」ことだと考えています。

 企業にとってユーザー情報は、顧客データベースを作るためのものだけとは限りません。自動車のように定期的に買い替えるような高額商品の場合は、CRMとしての顧客データベースも重要ですが、醤油や調味料、お酒などの非耐久消費財メーカーでは、顧客データベースは難しく、また構築しても大きな意味はないでしょう。むしろ、「ユーザーの希望」「好み」などの情報のほうがずっと有益です。

 SNSはそういったユーザーの情報を得る場合にも役立ちます。SNSでユーザーの生の声を集めることもできますし、企業からユーザーに向けてメッセージを伝える場としても活用できます。

 たとえば、自社の調味料を使ったレシピのWebコンテンツを作りSNSを使って紹介するとします。試してみたユーザーから「これがおいしかった」「自分はこれがお勧め」などという情報を自分なりに再構築したつぶやきが始まり、「いいね!」と認められれば、どんどん拡散されるでしょう。

 それらの情報はユーザーにとっても有益ですし、企業にとっても自社商品がユーザーにどのように評価されているのかを理解する企業な財産にもなります。これが新しいコンタクトポイントとしてのSNS活用例です。

●SNS活用の目的は「+α」で考える

 ほかにもSNS活用にはさまざまな目的が考えられます。私が企業のサイトマスターに「SNSが企業にとってどのように役立つのかを教えてほしい」とアドバイスを頼まれたときには、

「SNS+○○」

というプレートを書くことにしています。そして○○の部分にその企業にとっての課題やユーザーに求められるものを、一緒に探すことから始めます。

 自社製品の正しい使い方をユーザーに知ってほしいと考えている企業であれば、「SNS+eラーニング」になるでしょう。他にも「SNS+CRM」「SNS+オンラインショップ」「SNS+集客」「SNS+PR」など、さまざまな組み合わせが考えられます。

 この「+α」の部分は、1ページ目で解説した既存サイトの弱点でもあります。「+α」の部分が埋められないうちにSNSをスタートさせるのは、遠からず運用が行きづまるでしょう。そんなときは一歩立ち止まって、「SNS+○○」に入るものを探してください。SNSを運営すること自体が、企業の目的ではないからです。

 次回は、SNSの運用をテーマにお話ししたいと思います。


著者:小池 勉(こいけ・つとむ)

株式会社コンテンツブレイン 代表取締役。Webマーケティングプランナー。家電、自動車からアパレル、食品、ブライダル、クレジットカード、PCメーカー、部品メーカーまでさまざまなジャンルのサイトプランニングを数多く手掛ける。またWebにおけるCRM戦略の立案、アイトラッキングを活用したWebコミュニケーション効率化なども行なっている。


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