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『ビッグデータ革命』の著者に聞く 第2回

位置情報をユーザーから収集し、活用する、全力案内!

人は自分の持つデータの価値を意外と知らない

2012年03月11日 09時00分更新

文● 増田有孝/野村総合研究所 ユビークリンク事業部長
聞き手●桶谷仁志

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“ビッグデータミックス”に取り組みたい

 今後は、もっともっとたくさんの人に、プローブ交通情報の存在と、その有用性を知ってもらいたいと思っています。全力案内!の会員を増やすことも大事ですが、自分たちだけでは限界があるので、他社とのコラボレーションにも力をいれていきます。現状では、トヨタ自動車と連携し、共同ブランドで、全力案内!の技術を使っていただいています。従来は、スマートフォンのナビサービスを使ったことがなかった人にも、連携のおかげで、その便利さを知っていただける。こうした連携のメリットを強く意識しながら、サービスを拡大していければと思います。

 また、位置情報データとソーシャルメディアを結び付けたサービスもどんどん開発していく予定です。いわば“ビッグデータミックス”ですね。

 全力案内!を手がけることで、私たちは、位置情報データの使い方に磨きをかけることができ、良いアプリを作るノウハウが蓄積できました。今後は、位置情報データと別のビッグデータとを組み合わせた“ビッグデータミックス”で、さらに付加価値を高めていければと思っています。いま取り組んでいるのは、『ビッグデータ革命』でも触れましたが、ツィッターのつぶやきと交通情報を組み合わせて、より使い勝手の良い交通情報を作っていく試みです。

海外展開も視野に入れる

 最初から夢として持っていた海外展開も、視野に入ってきました。現時点でも、複数の新興国などから、社会実験に協力して欲しいといった引き合いをいただいています。各国の道路管理者、日本で言えば国土交通省、高速道路公団のような団体から、相談を受けています。日本で全力案内!を使っていた日本人が、海外に行って、その利便性、使い勝手の良さを紹介してくれるといったクチコミの形で、全力案内!の情報が広がっているようです。

 海外の自動車メーカーのオファーもあります。日本人ならではのきめ細かいサービス作りに魅力を感じるという、非常にありがたいお褒めの言葉もいただいています。先の道路管理者の社会実験と、自動車メーカーのオファーがうまく結びついて、各国で全力案内!システムを応用した交通情報が提供できたら理想的ですね。

他社のデータ活用も有望な選択肢

 本書『ビッグデータ革命』の読者には、他社の持っているデータに着目するのも、ビッグデータビジネスの選択肢の一つだというメッセージを送りたいと思います。

 全力案内!がタクシー会社のデータに着眼した際に、当のタクシー会社では、配車用に使っている位置情報データが、他の用途に使えるとは夢にも考えていませんでした。このケースでもわかるように、自社で持っているデータに関して、社内の人が、新しい使い途をさがすのは難易度が高いのです。

 逆に言うと、他社の持っているデータに着目して、客観的な立場から、新しい使い方を考えるほうが、ビジネスの可能性が高まることもあるのです。新しい使い方を考える際に、自社の持っている技術やデータとミックスする可能性を探るようにすると、さらに効率の良いビジネスモデルが作れるかも知れません。

 他社とデータのやり取りの交渉をする際には、一定の問題意識や社会貢献への期待を起点にして話を進めると、スムーズにいくのではないかと思います。

 私たちが「日本から渋滞をなくしたい」という問題意識、社会貢献への期待を持って、タクシー会社さんと交渉を始めたような発想と試みが、今後、世の中に広がっていけば、眠っていたさまざまなデータが、従来とは違った形で使われる事例が増えていくのではないでしょうか。『ビッグデータ革命』が、そんな試みのきっかけになってくれればと願っています。

増田有孝(ますだ・ありたか)

ユビークリンク事業部長。2007年 株式会社ユビークリンクを設立し、代表取締役社長に就任。スマートフォン、フィーチャーフォン向けの人気ナビゲーションアプリ全力案内!事業や、プローブ交通情報事業はスタートアップから携わっている。2011年に野村総合研究所へ戻り現職。『2010年日本の経営』(共著、東洋経済新報社)、『戦略実践ノート』(共著、ダイヤモンド社)をはじめ、多数寄稿。

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