前回のAMDロードマップアップデートでは、サーバー向けCPUと「PileDriver」コアの詳細について説明した。今回はAPUの話題である。下の左スライドは2011~2012年の、右スライドは2012~2013年のCPUとGPUのロードマップである。両方をまとめると、ポイントは以下の点にある。
- 2011→2012年には「Llano」が「Trinity」に刷新。さらに2013年には「Kaveri」に刷新される。
- 2011年の「Brazos」は、2012年に「Brazos 2.0」になるが、大きくは変わらず。また適用範囲も縮小。2013年には「Kabini」に切り替わり、2011年とほぼ同じポジションに戻る。
- 2012年にはUltra Low Power APUである「Hondo」が投入され、これが2013年には「Temash」に刷新。
デスクトップ向けのハイパフォーマンス市場向けCPUは、前回紹介したとおり2012~2013年に「Vishera」が投入される。ただし、これはあくまでデスクトップのみ。デスクトップ向けのメインストリーム市場以下とモバイル向けの全部は、APUでカバーされる。
GPU性能の強化が焦点となる
Trinitiy~Kaveri世代のAPU
ではそのAPUについて、まずはLlano~Trinitiy~Kaveriというメインストリーム向けから解説しよう。この世代では、大雑把に言えば「GPU性能の強化」が一番重要なテーマである。
Llanoがおおむね600GFLOPSなのに対して、Trinityでは800GFLOPS強、Kaveriは1000GFLOPS強の性能を狙っている。アーキテクチャーが異なるGPUを搭載するから一概に比較はできないのだが、Llanoベースの「AMD A8」が最大400SP(シェーダープロセッサー)/600MHzなので、Trinity世代では400SP/800MHz相当になる。同じ計算だとKaveriは400SP/1GHz駆動になるが、この世代ではGPUコアが「GCN」に変わるから、この計算はあまり適当ではないだろう。
プロセッサーを含めた性能に関しては、下のスライドが多少参考になる。これはモバイル向け向けの話で、LlanoとTrinityを比較すると、おおむねTriniryが倍の効率の良さを示すとする。
個別の性能で言えば、CPUコアはStarsコアからPiledriverコアに変わって、最大25%の性能向上。GPUはLlanoからTrinityで最大50%の性能向上、といった数字だそうだ。この結果、Trinityは特にモバイルの分野で、Llanoよりも大幅にバッテリー寿命が伸ばせるという話になっている。
それはそれで事実だと思うが、その一方で「デスクトップ向けの65Wや100W TDP枠の製品の性能が、そのまま倍増するか?」と問われれば、これは恐らく無理であろう。一般論であるが、消費電力や発熱は動作周波数が上がると指数級数的に上昇するから、17W近辺では倍近い性能差があったとしても、65~100Wで動作中だとそこまで性能は向上しないだろうと思われる。

この連載の記事
- 第712回 推論をわずか20mWで実行するエッジAIチップ「ERGO」 AIプロセッサーの昨今
- 第711回 Teslaの自動運転に欠かせない車載AI「FSD」 AIプロセッサーの昨今
- 第710回 Rialto BridgeとLancaster Soundが開発中止へ インテル CPUロードマップ
- 第709回 電気自動車のTeslaが手掛ける自動運転用システムDojo AIプロセッサーの昨今
- 第708回 Doomの自動プレイが可能になったNDP200 AIプロセッサーの昨今
- 第707回 Xeon W-3400/W-2400シリーズはワークステーション市場を奪い返せるか? インテル CPUロードマップ
- 第706回 なぜかRISC-Vに傾倒するTenstorrent AIプロセッサーの昨今
- 第705回 メモリーに演算ユニットを内蔵した新興企業のEnCharge AI AIプロセッサーの昨今
- 第704回 自動運転に必要な車載チップを開発するフランスのVSORA AIプロセッサーの昨今
- 第703回 音声にターゲットを絞ったSyntiant AIプロセッサーの昨今
- 第702回 計52製品を発表したSapphire Rapidsの内部構造に新情報 インテル CPUロードマップ
- この連載の一覧へ