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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第135回

GPU黒歴史 Voodooで羽ばたいた3dfxを墜落させたVSA-100

2012年01月23日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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つまづきの始まりは「Voodoo3」
ハードウェアT&L時代で後手に回る

 ところが1998年にリリースした「Voodoo3」で、3dfxは大きなミスを犯した。Voodoo2までの同社は、あくまでもグラフィックチップを供給する立場であり、これをさまざまなカードベンダーが製品化として売っていた。ちょうど現在のAMDやNVIDIAの形態である。特にCreative LabsやDiamond Multimediaは、Voodoo2ベース製品の大手ベンダーであった。

 ところが1998年12月に3Dfxは、グラフィックカード競争の激化に敗れつつあったSTB Systems社を買収。それと共にVoodoo3では、STB Systemsの持っていた設備でカードを製造して、3dfxが販売するという方針に切り替えた。3dfxとしては、チップ単体で売るよりもカードで売ったほうがより利幅が大きい、という判断をしたのかもしれない。だが結果として、これまで有力パートナーだったCreative LabsやDiamond Multimediaを初めとする、カードベンダーの怒りを買うことになった。

 これらのベンダーはいずれも、S3やNVIDIAのチップをベースとした製品ラインナップに切り替えることになり、おまけにVoodoo3搭載製品の立ち上げがやや遅れた(製品出荷は1999年4月)こともあって、3dfxのシェアは急落する。

 さらに悪いことに、やがて性能面でも後れを取ることになってしまった。Voodoo3発売当時の競合製品といえば、NVIDIAの「RIVA TNT」や旧ATIの「Rage 128」といったところで、これらに比べるとVoodoo3は十分に高速だった。しかし、1999年8月に発表されたNVIDIAの「GeForce 256」でいきなり勢力図がひっくり返ることになってしまった。

 ハードウェアT&Lの搭載により、Direct 3Dで使い物になる3Dグラフィックが初めて出てきたという言い方もできる。翌2000年7月には、ATIもやはりハードウェアT&Lを搭載する「RADEON 256」を発表し、これ以降ハードウェアT&Lの搭載されていないグラフィックチップが競合するのは、非常に難しくなってきた。

 ところが3dfxはこうしたハードウェアT&Lへの対応はかなり後手に回った。同社は、むしろAA(アンチエイリアス)などへの対応が先に必要と判断したようで、ハードウェアT&Lへの対応はその後となっていたから、いきなりマーケットで出遅れることになってしまった。

 それでも1999年の展示会COMDEXでは、3dfxは新世代チップである「VSA-100」と、これを搭載した「Voodoo4」「Voodoo5」を発表する。Voodoo4はVSA-100を1基搭載するローエンド向け。Voodoo5はVSA-100を複数基搭載し、これをSLIで接続するというものだ。実際の製品投入はまずハイエンドから、ということでVoodoo5が2000年6月に発表され、Voodoo4は2000年9月にずれ込んだ。

2000年末に秋葉原で販売されていた「Voodoo4」搭載カード

 これに続き、VSA-100を4基搭載した「Voodoo5 6000」の開発もほとんど終わっていたが、最終的にこれは発売されることなかった。2000年12月、3dfxはNVIDIAに買収され、Voodooシリーズは終息することとなった。

2000年9月にマイクロソフトが東京で開催した開発者向けイベントで公開された「Voodoo5 6000」の試作品。これはほぼ最終品に近いもの。ちなみにその前の試作品との違いは、「Voodoo Power(後述)で電源を入れるとLEDを光らせていたのを、コストダウンのためにやめた」程度だったと記憶している

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