11月16日、トレンドマイクロは企業向けウイルス対策製品「ウイルスバスターコーポレートエディション 10.6」を発表した。2010年8月に発表した「同 10.5」の後継となる製品で、情報漏えい対策の新機能、検索時間を3割削減するなどのパフォーマンス向上、Macやスマートフォンへの対応などが行なわれている。
主となる製品ラインナップは、多くの機能を提供する「Client/Server Suite Premium」と新しく加わった「ウイルスバスターコーポレートエディション Plus」。前バージョンと同様に「Client/Server Suite」なども販売されるが、主力製品は前述2種になるようだ。
同日行なわれた記者発表会では、同社マーケティング本部 エンタープライズマーケティング部 プロダクトマーケティングマネージャーの松橋孝志氏が登壇し、企業のクライアントPC(エンドポイント)はさまざまな脅威にさらされており、また情報漏えい事件が多発する現状を解説。
つづいて、そうした状況に対処するための3つの機能を「ウイルスバスターコーポレートエディション 10.6」が搭載することを紹介した。
情報漏えい対策のための機能の1つは、「仮想パッチ」だ。この機能について「公式のパッチが提供されていない脆弱性に対し仮想的なパッチを提供する」との説明があったが、実際には脆弱性を狙う攻撃(通信)を事前に遮断する機能であり、一般的に「IPS(侵入防止システム)」と呼ばれる機能のことだという。
2つ目がWebレピュテーションだ。不正なURLへのアクセスをブロックすることで、不正プログラムの侵入を防ぐものである。
そして3つ目となる、新機能が「USBなどのデバイスコントロール」となる。これは、事前に許可したUSBメモリのみ利用を許可する、個人情報が記載された文書のコピーを禁止するといった機能により、機密情報の外部への流出を防ぐ機能だ。
具体的には、電話番号やクレジットカード番号など特定のパターンを持った文字列、特定のカテゴリに含まれる文字列を指定し、その出現回数を任意に設定する。すると、該当の内容を含む文書ファイルに対し、コピーや送信を制限できる。また持ち出し手段についても、USBメモリだけでなく、プリンターやCD/DVD、メール、HTTP、FTPなど、さまざまな監視対象を設定可能だ。
また、ポップアップで警告を出すことで、「これは機密情報に該当するファイルであり持ち出しをしてはいけないのだな」と従業員に気づかせる効果もあるという。
こうしたデバイスコントロールによる情報漏えい防止製品は、すでに多くのベンダーが提供している。だが、ウイルスバスターコーポレートエディションに搭載されることで、専用の管理コンソール上で、ウイルス対策と併せて管理が可能になるメリットがあるという。
安全確認済みのファイルのスキップでスキャン短縮
ウイルスバスターコーポレートエディション 10.6では、パフォーマンスの向上が図られている。まず、本ソフトをインストール後に作成するデジタル署名キャッシュにより、Windowsのシステムファイルなど安全と判断したファイル、前回の不正プログラム検索時に安全と判断されて変更履歴のないファイルは、スキャンをスキップする。これにより、手動検索やスケジュール検索時間を約30%削減したという。
さらに、ウイルス対策ソフトを入れるとPCの起動が遅くなるという声も聞かれるが、PC起動時のCPU負荷を監視し、OS起動直後は必要最小限のモジュールから段階的にメモリに展開することでOSの起動時間を削減することにも成功している。
Macやスマートフォンの保護にも対応
これまでウイルスバスターコーポレートエディションの保護対象は、WindowsやWindows Server、一部のDVI環境、そしてMac OS Xだったが、今バージョンからAndroid、iOS、Blackberry、Windows Mobile搭載のスマートフォン/タブレット端末が加わる。
これまでも、Client/Server Suite PremiumのライセンスでMac OS X用のウイルス対策「Trend Micro Security for Mac」が利用できたが、同様にスマートフォン用セキュリティ「Trend Micro Mobile Security」(スタンダードエディション)が利用可能になる。
Trend Micro Mobile Securityのスタンダードエディションでは、スマートフォン/タブレット端末の不正プログラム対策やWeb驚異対策、Webや着信電話、SMSのフィルタリング、さらにイベントリーやポリシー、ログの管理などが行なえる(iOSやBlackberryは不正プログラム対策などには非対応)。
異なるブランドの製品だが、情報漏えいの場合と同じく、ウイルスバスターコーポレートエディションの管理コンソールで集中管理が可能になる。
価格は、ウイルスバスターコーポレートエディション Plusが5240円(250ライセンス購入時の1ライセンスあたり価格)、ぜい弱性対策などの機能が標準で含まれるClient/Server Suite Premiumが8350円(同)。両エディションで利用可能な機能やオプションの価格などは、下記表を参照のこと。
上記表の元となったデータにミスがあったとトレンドマイクロから連絡がありました。初出時、下部の注に「※6 上記参考標準価格は1年間のスタンダードサポートサービス料金を含めた1ライセンス(1000ライセンス購入時)あたりの使用許諾料金です。」とありましたが、「1000ライセンス購入時」ではなく「250ライセンス購入時」となります。お詫びし、訂正させていただきます。上記表は修正済みです。(2011年11月17日)
製品の受注開始は2012年1月27日、出荷開始は1月31日となる。