11月7日、サイボウズはプログラムを書くことなくアプリを開発できるというPaaSサービス「kintone(キントーン)」、kintoneやサイボウズOfficeをオンラインで提供するクラウド基盤「cybozu.com」の正式スタートを発表した。
kintoneは、4月19日に開発中であることが発表されていたサービス。「現場では今すぐシステムが欲しいのに、現場のビジネススピードに情報システムが追いついていない」。こうした状況に対処すべく、ユーザーからの要求を素早くシステム化できる「ファストシステム」をコンセプトに開発された。
ドラッグ&ドロップでフォーム作成が可能なデータベース機能、処理状況をアクションを設定できるワークフローを提供するプロセス管理機能、データベースに登録された情報の確認や議論を実現するコミュニケーション機能という3つの機能を搭載しており、「組織で仕事をするために必要十分な機能」(サイボウズ)を搭載する。
これにより、商品管理や契約書管理、営業案件管理、売上げ集計、クレーム管理、プロジェクト管理など多くの用途に利用でき、構築は数分程度だという。
価格は300ユーザーまでで月額800円/ユーザー、もしくは年額1万345円/ユーザー。301~1000名では、月額835円/ユーザーもしくは年額9815円/ユーザー。1ユーザーあたり1GBのデータ容量が提供されるほか、100GBあたり月額1万円で増量可能となっている。
また、同時に発表されたcybozu.comは、サイボウズが独自開発したクラウド基盤となる。社内で管理するためセキュリティは高いがコストがかかるプライベートクラウドでも、インターネット上で誰でもアクセスできるためリスクが高いパブリッククラウドでもない第三の選択肢「プロテクテッド クラウド」を標榜する。
最大の特徴は、ログイン時のセキュリティの強化だ。一般的なクラウドサービスでは全ユーザー共通のログイン画面にアクセスし、メールアドレスをログイン名として認証する。そのためフィッシングサイトを作られる危険性が高く、またメールアドレスは秘匿されるものではないため、あるユーザーのパスワードさえ入手できれば、そのユーザーになしすますことができてしまう。
これに対しcybozu.comでは、企業ごとにサブドメインを用意し、企業名が入ったログイン画面で認証を行なう。そのため、一般的なフィッシングサイトを作ることが不可能となる。またログイン名はメールアドレスではなく、企業の管理者が設定可能で、パスワードのポリシーも企業ごとに細かく設定できる。加えて、クライアント証明書を使った「セキュアアクセス」オプションを用意する。標準で提供される接続元IPアドレスによる制限と、このセキュアアクセスを組み合わせると、クライアント証明書なしではログイン画面に到達することすらできない環境を構築可能だ。
信頼性の確保としては、国内のデータセンターを使い、24時間/365日の有人監視、ネットワークからデータまでの多重化を行ない、99.9%以上の動作を目指すSLO(Service Level Objective)を策定する。また、ISMSも近日取得完了予定だという。
cybozu.comで提供するのは、前述の通り、まずはkintoneとサイボウズ Office。サイボウズ Officeの料金は、1ユーザーあたり月額500円からで、初期費用はかからない。クライアント証明書を使うセキュアアクセスは、1ユーザーあたり月額250円だ。
ほかに、サイボウズ ガルーンとメールサーバーの提供が始まるほか、OEM提供を受けるビデオ会議が可能なWeb会議システムも用意する。そして今後、「サイボウズ メールワイズ」のような自社ソフトウェアも順次対応していくという。