パフォーマンスは十分
ソフト仕様の「古さ」に疑問も
今回テストしたSH76は店頭販売仕様のもので、搭載されているCPUはCore i5-2520M(2.50GHz)である。このクラスの製品向けとしてはもはや標準的なCPUであるが、Windows 7上でビジネスアプリケーションを中心に使うなら、パフォーマンスの点で不満を感じることはまずない。Windowsインデックスエクスペリエンスの値は「5.8」。総じて値はかなり高く、パフォーマンス面での充実度は申し分ない。
むしろ気になったのは、総じて発熱が高めであることだ。決して不快なレベルではなく、フルパワーに到達してもさほど厳しい値にはなっていない。だがアイドル時でも高温の排気がそこそこ出ていることと、特にキーボード左側に熱が伝わりやすいことは気になった。他方でパームレストは終始発熱量が小さく、快適だったと感じる。
SH76はハード面では問題の少ない、よくできた製品だと思う。キーボードのタイプ感は好みではないが、粗悪なわけではない。むしろデザインは独自性が高く、評価できる。ただ、使い始めてちょっとうんざりしたのは、デスクトップ上に並ぶ大量のアイコンだ。
不要なソフトが多く付属してくるのが常だが、こうも並べられるとちょっと興ざめだ。もちろん自分で削除すればいいのだし、それが性能に与える影響も少ない。アイコンの中には、本体価格を下げたり広告費を捻出したりするために必要な、パートナーのアプリケーションもあるだろう。
しかし、SH76の広くないディスプレーでは、あまり得策とは思えない。SH76のディスプレーは1366×768ドット。価格帯・サイズから言えば標準的なものだが、大量のアイコンのためか非常に狭く感じられる。
ユーザーがあまり使わないソフトを大量に入れること、そしてそのアイコンを並べて誘導するという手法は、そろそろ考え直した方がいいのではないだろうか。SH76は海外メーカーにも負けない、とても優れた製品だと感じるが、この画面をみた瞬間に「古いな」という印象を受ける。
また省電力ユーティリティー系も、ちょっと古い。設定をひとつひとつ変えられるのはいいが、プロファイルを複数保存して切り替える、といった思想にはなっていない。「シンプルな使い方ならこれで十分」という考え方なのかもしれないが、他社のものに比べ使いづらいと感じた。
光学ドライブ搭載のモバイルノートが減り始めている今、光学ドライブ内蔵にこだわるなら、SH76は強くお勧めできる製品である。だが、ソフト面での仕様をそろそろ見直さないと、ハードの「新しさ」についてこれない気がする。
- お勧めする人
- ・光学ドライブ「内蔵」のモバイルノートにこだわる人
- ・長時間利用可能なバッテリー容量が必要な人
LIFEBOOK SH76/E の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i5-2520M(2.50GHz) |
メモリー | 4GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 13.3型ワイド 1366×768ドット |
ストレージ | SSD 128GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g/n、WiMAX |
インターフェース | USB 3.0×1、USB 2.0×2、HDMI出力、アナログRGB出力、10/100/1000BASE-T LANなど |
サイズ | 幅316×奥行き223×高さ16.6~23.2mm |
質量 | 約1.34kg(光学ドライブ装備時) |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit版 |
予想実売価格 | 18万円前後 |
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形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組 (ビジネスファミ通)西田 宗千佳(著)エンターブレイン
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(共著、徳間書店)。「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)。最新刊は「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)。
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