今回は連載92回で説明したインテルチップセットのアップデートについて、次世代チップセットとなる「Intel 7」世代の詳細が見えてきたので紹介したい。
Z68の登場で、
今後はPシリーズチップセットは消える?
まずは92回の訂正から。すでに出荷されている「Intel Z68 Express」だが、前回は「(オーバークロック向けに)独立したクロックを供給できるようになるのでは?」と予測したが、残念ながらそういう話はなく、やはり単一クロックでの供給のままであった。
したがって表面的にみると、「Intel P67 ExpressにFDIを追加し、内蔵GPUのビデオ出力が可能になった≒Z68」になるわけだ。独立クロック供給の代わりというわけではないのだろうが、新しく搭載された機能が「Intel Smart Response Technology」(ISRT)。SSDをHDDのキャッシュとして利用できるというものだ(関連記事)。
またP67同様に、PCI Express 2.0 x16のGPU用レーンを、x8レーンを2本に構成することも可能だ。これはIntel H67 Expressには不可能だった。またLucidLogix社が提供するマルチGPU切替ソフト「Virtu」も利用可能となっている。このVirtu自身は本来、Z68とは無関係の技術である。だが、独立GPUを使いながらSandy Bridge内蔵GPUの「Media Engine」を利用可能にするツールとして、インテル自身が自社のウェブサイトで公開しているほどだから、Z68とは無縁とも言いにくい。
Z68の存在が何を意味しているかというと、従来は「Pxx」が独立GPU対応のメインストリーム~ハイパフォーマンス向けで、「Hxx」が内蔵GPU併用のメインストリーム向けという製品ラインナップが崩れたことだ。新たに「Zxx」が登場したことで、これがPを置き換える。それが明確になったのが、続くIntel 7シリーズチップセットである。
Intel 7シリーズは2012年初頭に
3~4ラインナップが発表?
では、本題であるIntel 7シリーズについて説明しよう。おそらく2012年1月に開催されるInternational CES 2012でのタイミングで、次世代CPU「Ivy Bridge」と一緒に、「Intel Z77」「Intel Z75」「Intel H77」の3製品と、場合によっては「Intel Q77」も一緒に発表されることになるだろう。7シリーズの6シリーズに対する改良点としては、以下のものが挙げられる。
- Ivy Bridge対応。Sandy Bridgeにも対応すると見られる。
- USB 3.0ポートをネイティブでサポート(全14ポート中、USB 3.0対応は4で残り10USB 2.0対応)。
- 全製品がFDI(Flexible Display Interface)をサポート。3画面の独立出力も可能。
なお、Ivy Bridge世代はPCI Express 3.0(Gen3)をサポートすることになっているが、これはCPUから直接出てくるPCI Express x16レーンの話。CPUとチップセットを結ぶインターフェース「DMI」は、引き続きPCI Express 2.0相当の5GT/秒での接続となるため、チップセットそのものは2.0対応となる。

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